研究課題/領域番号 |
23520170
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研究機関 | 大阪教育大学 |
研究代表者 |
北川 純子 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (00379322)
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キーワード | 浪曲 / 三味線 / 規範と逸脱 / 参与観察 |
研究概要 |
(1)博士論文「浪曲三味線の研究」を執筆、博士号(学術)を授与された(2013年3月、お茶の水女子大学)。浪曲三味線の「手」について、規範と逸脱という観点から音楽学的な分析を行い、現在伝承されている「手」は浪曲の誕生期から存在していたわけではなく、時代の推移の中でつくられてきたものである、との見方を提示した内容の当該論文は、①楽譜を使わずに伝承されてきている浪曲三味線の「手」について、大阪と東京での伝承内容を五線譜で提示して考察を行った点、②実演された浪曲の音盤における三味線の「手」について、伝承されている「手」との比較に基づいた音楽学的分析を行い、「手」は逸脱を前提とした規範であるとの見方を打ち出した点、③浪曲三味線の「手」の史的形成過程について、一部を明らかにした点で意義をもつ。 (2)大阪教育大学紀要(第I部門 人文科学)第61巻第1号に「浪花亭綾太郎《壷坂霊験記》の二種の録音の分析」(2012年9月)、同第2号に「浪曲三味線の口頭伝承」(2013年2月)を発表し、この2本の論文は大学リポジトリにてweb上で公開された。前者は20世紀半ばの特定の演題をめぐり、浪曲の「語り」と三味線部分、両方の可変性について検証した内容、後者は、現在どのように新しい三味線の「手」が生成されているかの事例研究を提示した内容であり、いずれも、浪曲三味線の「手」の史的形成過程を探る手がかりの一端としての意義をもつ。 (3)浪曲三味線奏者として、毎月、木馬亭浪曲定席の舞台に立ち、演奏ならびに楽屋でのフィールドワークを実施した。その成果の一部は既に各論文に反映されており、また、今後の研究に反映されてゆくものであるが、浪曲共同体に入り込んでの参与観察を継続的に行っていることは、文化研究のありかたの可能性の一つを体現している点で意義をもつ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実演者としても活動することによって、浪曲師ならびに曲師へのインフォーマルなインタビューを継続的に行うことができ、成果の一部として、3本の論文(うち一本は博士論文)を執筆できた。
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今後の研究の推進方策 |
(1)大阪と東京以外の地方都市での浪曲受容のありかたとその変遷をめぐるフィールドワークに着手し、研究の展開へとつなげる。 (2)東京での浪曲共同体におけるフィールドワークに加え、大阪での浪曲共同体に関する参与観察に着手し、研究の展開へとつなげる。 (3)本研究課題の成果となる報告書を執筆・印刷する。
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次年度の研究費の使用計画 |
(1)フィールドワーク(実演の場での楽屋フィールドワーク、浪曲師と曲師へのインフォーマルなインタビュー)のための旅費 (2)研究成果の一部である博士論文の製本 (3)報告書の作成、印刷
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