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2012 年度 実施状況報告書

福永晴帆研究―客観的評価の確立と教育学研究への展開―

研究課題

研究課題/領域番号 23520173
研究機関福岡教育大学

研究代表者

松久 公嗣  福岡教育大学, 教育学部, 准教授 (00380379)

研究分担者 加藤 隆之  福岡教育大学, 教育学部, 准教授 (70572056)
キーワード国際情報交換 / 英国
研究概要

靖國神社に残る資料を調査することで,晴帆が制作した宗像大社御便殿襖絵の由来の一部が明らかとなった。襖絵の基底材となる資料に関する記載もあり,昨年度から進めてきた腰障子絵の模写研究とともに知見を深めることができた。また,現状模写を中心とした8面の完成に続き2面の再現模写を試み,晴帆の技法の解明にあたった。南画家として紹介されることの多い画家であるが,工芸的な箔の砂子技法を駆使し,計画性を持った制作を行っていることが判明した。完成した作品は宗像大社と連携して鑑賞教育に活用することが可能となり,地域の文化財を活かした美術教育の展開が望める。
また,昨年度の画稿の分析を進め,文中に書かれていた漢詩は晴帆自身によるものである可能性が高まった。さらに,漢詩にも書かれている「白狐」の作品について,発見する糸口が見いだせた。情報を頂いた個人が所有する屏風絵一点と掛軸一点についても調査協力の了解を得ており,今年度収集した作品とともに画風の変遷や技法について調査を進める。
昨年度の画稿の分析とご息女への取材ならびに模写研究の成果を総合的にまとめ,大学美術教育学会において研究成果を発表し,客観的な評価を得るとともに今後の調査に関する他の専門家の助言を頂くことができた。
ただ,残念なことに,晴帆のご息女が他界され大切な証言者を失ってしまった。しかし,ご遺族からの聞き取り調査を継続する了承を得ており,晴帆を直接知るお孫さん等に対する聞き取り調査と資料の発見に努めたい。
晴帆の画稿に書かれた文章は西欧に長期滞在したことによる進んだ考えが表されており,戦前・戦後の時代にあって社会を客観視した内容となっている。改めて日本美術史からその存在が薄れつつあることが不思議であり,他の作家の洋風表現とは異なった意識と技法を比較検討することで,晴帆芸術の価値を明確にしていきたい。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

晴帆に関する研究を進めることで,晴帆の人物像や作品に関して情報が集まりだした。学会で発表したことで,全国に情報が広まり,断片的な情報を得ることができている。また,マイクロスコープによる紙料の分析など科学的な調査を行い,模写研究にも客観性が加わってきた。これまでは個々に存在する情報や作品の収集が主であったが,作品の模写研究や研究ネットワークの拡大によって,情報や作品の関連性が読み取れるようになってきている。
晴帆作品の直接的な収集は予定数に届かなかったが,調査の了解を得た作品数を加えると想定数に達しており,これに他の寺社における晴帆作品の調査を継続することで,さらに資料収集の拡大が予測できる。
英国での調査を延期したが,国内調査を優先することで研究成果が高まっており,適切な時期を見計らって行う予定である。

今後の研究の推進方策

国内の作品調査ならびに技法に関する研究を継続する。また,出身地である山口県を中心に経歴の確定を目指す。
順調に進めている模写研究については,当初の計画を上回る成果を目標に設定し,専門家の助言を得ながら襖絵の一部にまで拡大する予定である。
最終年度は研究成果を教育学に展開する手段としてポートフォリオ形式の視覚化を計画しており,模写を中心とした成果物を含めた学校教育カリキュラムへの展開を行う。

次年度の研究費の使用計画

晴帆の洋風表現についてまとめるために,留学先である英国への追跡調査を予定していたが,国内の新規作品に関する情報を得たことで国内調査を優先した。次年度の適切な時期に英国での調査を行うため,今年度計上していた旅費の一部を次年度に使用する。

  • 研究成果

    (1件)

すべて その他

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] 福永晴帆研究-客観的評価の確立と教育学研究への展開-

    • 著者名/発表者名
      松久 公嗣
    • 学会等名
      第51回大学美術教育学会(大分大会)
    • 発表場所
      大分大学

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公開日: 2014-07-24  

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