研究課題/領域番号 |
23520189
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研究機関 | 東京電機大学 |
研究代表者 |
小坂 直敏 東京電機大学, 未来科学部, 教授 (20366389)
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キーワード | 電子音色辞書 / 音色合成 / 環境音 / 音データベース / マルチプラットフォーム / C++ / 音色記号 / IPA |
研究概要 |
本研究は環境音を対象とした1)電子音色辞書の構築、 2)音合成システムの構築、およびこれらの統合システムの構築を応用上の目的とし、これらを独創的なシステムとするため、環境音の聞こえをIPAに基づいた音色記号で表して、これらを用いた逆引き検索も可能とする点が特徴である。また、そのための音色記号の聞こえの心理的特性を明らかにすること、また音色記号の設計を行うこと、これらを応用した譜面の作成、楽曲の制作、およびこれらの成果の啓蒙、および広報を目的とした制作発表会の実施、が研究の骨子である。 この中では、1)が大きく進展した。2)について、23年度に進展した環境音の聞こえに関する心理的検討は担当者が離籍したこともあり、本年度はほとんど進展しなかった。 1)はシステムの充実が図られ、Windows,Mac OS,Linuxのマルチプラットフォームで動作するための枠組みの検討を行った。その結果、電子音色辞書は、これまで動作していた高級言語での枠組みをとりはずし、C/C++とWxRidgetsという枠組みでシステムを書き直し、まずはスタンドアロンで動作するようにシステムを立ち上げた。この枠組みの特徴は、システムのGUIがOSのネイティブに即していることである。そのため、ユーザが日頃使用するOSに応じたGUIが現れ使いやすい。 このほか環境音データベースの充実を図るため、新たに作業員に依頼して音の収録を行い、これまで未整理のデータと併せて整備した。また、新たに実際にシステムを使用する状況で評価を行い、システムの性能を定量的に表した。 音合成システムについては、動作が電子音色辞書とリンクするよう、システム製作した。合成エンジンについては、システムで用いるエンジンをCで書き、これを書籍用に執筆し出版した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初計画からみると、IPAに準拠した音色記号の設計、環境音の聞こえの特性調査、これを用いた音合成システムの設計などが遅れている。環境音の聞こえの特性調査は23年度新たに進展したが、24年度は、担当者の離籍もあり、この成果を受けた研究上の発展がなく論文化まで至っていない。その結果、音色記号の設計もまだなされておらず、「記号からの音合成システム」の記号部分がまだ達成できていない。 一方、本研究で記号関係の研究と両輪で走っているのが「電子音色辞書」である。こちらは予想したよりも格段に進展した。特に 1)c/c++により書き直しとWxRigetsによるマルチプラットフォーム化、2)音データベースの充実、3)スタンドアロン版とサーバ・クライアントシステムによるネットワーク化のうちスタンドアロン版の達成、4)英語版の製作 5)実際にアニメの絵コンテに音をつける、という想定での評価データの収集 を行うことができた。 以上のように電子音色辞書の進展は著しく、今後はサーバ・クライアントモデル上でシステムを構築する。現在ほぼ世界に公開できる状況となっている。
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今後の研究の推進方策 |
1)電子音色辞書については以下の計画である。 a) サーバクライアントモデルを構築する。言語も日本語版と英語版をさらに充実させて製作する。 b)マニュアルなど説明用のURLを整備して社会にリリースする。c)音データベースをさらに充実させる。 2)環境音の聞こえの特性とその記号設計について、最低限の記号を定義する。これによりユーザの欲する音が入力できるようにする。これを用いた音合成システムを作成する。 なお、音合成のエンジンについては必ずしも新たな枠組みを要しない。これらはよく知られている方法を基にして、この記号入力による合成、という視点のシステム製作を中心とする。IPAがあまり多くの人が使いやすくないことを考え、擬音語を日本語表記した記号列も入力として検討する。 3)以上、音楽制作において、a)環境音に記号をつけることにより譜面化を行えること、b)このような形で作られた楽曲を紹介することを目的として、作品制作を行う。 また、このような考えを推し進めるツールとして、本課題のテーマである「記号からの音合成システム」を構築し、これを使用して楽曲を制作する。これらの活動を啓蒙することを目的として制作した音楽作品を発表する機会を作る。
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次年度の研究費の使用計画 |
まず、電子音色辞書関連で、物品としてサーバに30万円使用予定である。 またICMC,WOCMATなどの国際学会等、海外出張旅費で80万円、また制作発表に関わる人件費として40万円を使用する予定である。また、昨年計画した予算の残額が70万円ほどあるが、これは本来音データベース用に当てていたものだが、作業者の個人的都合で一旦打ち切ったものであるため、本年はこれを継続する。
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