研究概要 |
本研究は環境音を対象として1)電子音色辞書の構築、2)音合成システムの構築、およびこれらの統合システムの構築を目的とし、これらを特徴的なシステムとするため、環境音の聞こえをIPAに基づいた音色記号で表して、これらを用いた逆引き検索も可能とする。これらの前者については、a)電子音色辞書のオープン化と音データの収集,b)レクチャーコンサートの実施を目標とした。また、音色記号を実際に使用に耐えるものとするため、c)音色記号の聴知覚特性の検討、d)定常音を対象とした記号の付与、など新たな記号設計を行うための目標を掲げた。これらの音色記号を定義した後、この記号を用いた音合成システムを構築する予定であった。 これらの計画の中で、最終年度では電子音色辞書に関連する計画が大きな進展をみた。システムを充実、高機能化し、ネットワーク版とスタンドアロン版の二つのバージョンを構築した。また、これらは、WxWidgetsを用いることにより、MacOS,Windows,LinuxそれぞれのOSで動作することができるクロスプラットフォームを実現した。これらをフリーソフト化し、一般のユーザがネットからダウンロードして利用できるようにした。同システムの全貌、またそのフリーソフト化について、ICMC(国際コンピュータ音楽会議)2013にて発表した。また、これらを利用した楽曲をレクチャーコンサートにより紹介し、そのレクチャー内で電子音色辞書も紹介し、啓蒙の場とした。 一方、音合成システムの構築に至らなかったのは、音色記号の設計がうまくいかなかったためである。これは進展が遅く、c)の知覚特性の心理的検討に多大な時間がかかり、これを踏まえた記号設計に至っていないため、これを前提に発想していた音合成システムの構築まで至らなかった。 今後は、本計画の当初の意図を達成するため、音色記号の設計と、音合成システム構築を行う。
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