研究課題/領域番号 |
23520192
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研究機関 | 武蔵野音楽大学 |
研究代表者 |
楢崎 洋子 武蔵野音楽大学, 音楽学部, 教授 (50254264)
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キーワード | ジャンル意識 |
研究概要 |
前年度からの考察をまとめる作業として、三善晃(1933-)の合唱とオーケストラのための3部作《レクイエム》《詩編》《響紋》を対象に、それまでの三善の声楽曲、器楽曲、および、その両方を取り込んだ曲からどのような経緯で合唱とオーケストラのための構想をもつに至ったかについて記述を始めた。声楽曲と器楽曲のそれぞれにおいて優れた仕事を残し、さらに声楽と器楽を相互流入させて作曲様式を確立したと言える三善の事例は、他の日本の作曲家の器楽と声楽の関係を考察する指針となる。 『朝日新聞』の1930年以降の記事索引から、本研究に関連すると思われる記事を複写入手した。声楽と器楽のそれぞれにどのようなイメージが抱かれていたのか、また、どのような作品と演奏を評価する傾向にあったのか考察を始めた。 本年度は、国内外の現代のオペラ作品あるいはオペラに準じる作品の上演に接し、論評する機会を得たので(松村禎三《沈黙》、池辺晋一郎《高野聖》、リーム《猟区》、クセナキス《オレステイア》、ライマン《メデア》等)、それらの情報を、日本の器楽と声楽の関係を考察する上での指針とした。 さらに、これまで資料の有無と所在が不明であった、作曲家で指揮者の近衛秀麿(1898-1973)の書簡、作曲楽譜、編曲楽譜、校訂楽譜等の所在が判明し、遺族の厚意により、それらをスキャン処理後は閲覧、利用できる見込みとなったため、スキャンされた資料から、オーケストラ音楽が近衛の音楽活動に占めた位置の考察を始めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の研究計画にはなかった情報や資料を入手できる見込みとなり、入手とその処理に時間を当てるために、当初の研究計画を遂行する時間が少なくなったことによる。
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今後の研究の推進方策 |
「研究実績の概要」の項にも記したように、当初の予定を超える情報、資料を入手できる見込みとなったため、むしろそれらを本研究に資するものとして利用する。たとえば、オペラ、交響曲といった、普遍的で地位の高いジャンルに抱かれている認識と評価が、日本と他の文化圏との間では異なることを想定し、どのように異なるかについて考察することを通して、日本の作曲家がオペラを書くさいの作品イメージはどのように形成されたかについて考察し、それを裏付けるべく作品を考察する。
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次年度の研究費の使用計画 |
上述したように、海外の現代のオペラ作品をも参照するため、それらの楽譜と音盤も必要となり、その購入費用に当てる。また、海外でオペラを構想しながらも未完のまま帰国した経緯をもつ日本の作曲家の、当該作品の楽譜およびそれに関する情報を入手すべく事前調査した上で、入手可能であれば、当該国に赴くさいの旅費に当てる予定である。
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