研究課題
民間人が暮らしの中で表象してきた芸術の一つに「民間祭祀」がある。日本ではこの民間祭祀の中核に「民間神楽」が位置づけられている。本研究は中国大陸や朝鮮半島との交流の歴史的重要航路であった環瀬戸内海における民間神楽の表象物(神殿と呼ぶ祭場/柱/天蓋/白い布/等)の使用分布・使用方法・使用目的を当地域で悉皆フィールド調査/比較分析した上で、東アジア(中国長江中流域/朝鮮半島)の民間祭祀の表象物とも比較考察して、環瀬戸内海の民間神楽の成立と展開およびその意義を実証解明する。本研究を基礎に日本民間神楽の再定義を行う。平成24年度は環瀬戸内海地域に伝承する民間神楽を中心に実地調査した。4/8石城神楽年祭(光市)、4/29橋山神楽(北広島町)、5/20作木神楽(三次市)、6/2四国神楽(高知県梼原町)、9/1京築神楽(太宰府市)、9/22佐料神楽(高松市)、10/7太田神楽(尾道市)、10/18新居浜太鼓祭り(愛媛県新居浜市)、10/27御調白太荒神7年申し(尾道市)、11/10大原神職神楽/山王寺和野神楽(雲南市)、12/1ヤンサ祭り(中津市)、12/1三毛門神楽(豊前市)、12/2京築神楽(行橋市)、12/16上田原湯立神楽(大分県豊後大野市)、1/19城南宮湯立神楽(京都伏見区)、2/3佐伯神楽(大分県佐伯市)、2/10高千穂神楽(高千穂町上田原)、2/16修正鬼会(大分県豊後高田市)、2/25備中神楽(岡山県高梁市)、3/2布川花祭り(愛知県東栄町)、3/17梶矢神楽(安芸高田市)、3/24-27ヨンドンクッ(韓国済州市健入洞)、3/31三ツ山大祭(姫路市)の調査を実施した。これらの調査で各表象物が民間神楽だけでなく、民間祭祀や諸芸能のなかにも組み込まれていることを確認した。本研究の成果の一部は広島県、広島市をはじめ県内外の市町等で講演・報告した。
3: やや遅れている
国内調査(環瀬戸内海)については中国地方(山口県/広島県)と四国地方(香川県/愛媛県)および九州地方(大分県/福岡県)の調査。上述の報告(研究実績の概要)で示した通り70%程度達成できた。特に九州地方の湯立神楽に関する調査に成果を得た。海外調査については環瀬戸内海の表象物と比較できる民間祭祀を調査することとし、平成24年度は韓国済州市のヨンドンクッを調査したのみ。ブータンの仏教儀礼調査は初年度より計画しているが、状況が整わず実施できなかった。次年度以降に実施したい。
1.環瀬戸内海の民間祭祀(主に神楽)の現地調査を継続実施する。前年度全国的な調査を少し始めたが(高千穂神楽/花祭り等)、さらに広範囲に実施したい。2.ブータンの仏教儀礼調査。前年度、前前年度も事情でできなかったので、次年度夏季休暇中に実施する予定。3.韓国・江原道の民間祭祀調査を実施予定(2回)。4.現地調査の知見をもと整理し学会等で発表。民族藝術学会で「環瀬戸内神楽の表象」について研究発表をする。他に日本宗教学会/日本民俗学会等でも発表予定。また各団体の招待講演等で成果報告を行う。5.環瀬戸内海の神楽祭祀の全体について著書『中国・四国地方の神楽探訪』(仮題)を研究機関中に出版する。
1.物品費(機器/備品)150,000円:電子機器、撮影機材等の購入2.旅費:400,000円。(1)環瀬戸内海神楽のフィールドワーク調査(150,000)、(2)学会/研究会/資料収集のため(50,000)、(3)海外調査のため(韓国200,000)+ブータン3.人件費/謝金100,000円4.その他50,000円
すべて 2013 2012 その他
すべて 雑誌論文 (2件) 学会発表 (3件)
広島民俗
巻: 79 ページ: 1 25
歴史ジャーナル
巻: 100 ページ: 1 10