平成26年5月に、『忘れられた演劇』(神山彰編、森話社)の中で「琵琶劇とその周辺」と題した1章を頂き、琵琶と舞台劇・活動写真/映画・講談との融合の試みを中心とした報告の機会を得ることができた。 実演家との情報交流としては、薩摩琵琶の田中錦煌師への聴き取り調査、および戦前の琵琶伴奏付アニメーションフィルムへの節付依頼、筑前琵琶の田中旭泉師からの資料提供(琵琶歌本)、全国一水会からの情報提供を頂いた。また、東洋音楽研究者の薦田治子氏(武蔵野音楽大学教授)からは、『琵琶新聞』『水聲』(国会図書館・武蔵野音楽大学所蔵分)のデータ提供を頂いた。これらをスキャナにかけて電子データ化し、広く研究者・実演家の間で活用することを視野に、保存・公開方法を検討中である。ただし両機関の所蔵分では欠号が多く、完全なデータとはまだ言いがたい。今後は、未調査の地方の図書館での調査および実演家とのネットワークの強化によって、『琵琶新聞』『水聲』の欠号を補完していくこと、そして数多く発行されていたという各流派の機関誌・同人誌の類を発掘することが課題の1つである。 このように一気に資料が手元に来た一年であるが、それらを形にして報告する形態について、学会発表以外の場も検討中である。その1つが「復活上演」である。前述のアニメーション映画と琵琶弾奏を、大正期当時に近づける形での上演を模索中である。薩摩琵琶から新たな節付けの提案を頂くことができたので、まずは研究会にて発表を行い、「復活」か「新規」かの定義付け等を含め、世の評価を仰ぐ予定である。
|