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2013 年度 実施状況報告書

アイヌ口承文学的解釈学の創出

研究課題

研究課題/領域番号 23520208
研究機関東京大学

研究代表者

坂田 美奈子  東京大学, 総合文化研究科, 教務補佐員 (30573109)

キーワードアイヌ / 口承文学 / モチーフ・インデックス
研究概要

本研究はアイヌ口承文学におけるモチーフの役割を明らかにすることにより、アイヌ口承文学のテクスト解釈の方法論を立ち上げようとする試みである。具体的には金成マツが筆録したテクスト群を分析対象とする。北海道立図書館所蔵知里真志保遺構ノートに含まれる金成マツ筆録ノートには物語、歌謡、なぞなぞ、早口言葉など、多様なテクスト188編が記録されている。このうち本研究の分析対象となるのは散文説話、英雄叙事詩、メノコユカラ、神謡といった物語テクストである。
本研究は物語に頻出するモチーフを抽出し、モチーフ同士の組み合わせやモチーフと話型の関係などの特徴を分析することによって、それぞれのモチーフの担う働きやその意味を見出すことを目標とし、将来的にはモチーフを共有するジャンルを超えた物語間の参照関係を検討することによって、アイヌ口頭伝承的な知性のあり方にまで考察を進めることを目指している。具体的には、形式分類のためではなく、物語を読むために有益なモチーフ・インデックスを作成し、それを活用した物語解釈の実践を行う。
複数の物語に登場するモチーフには、例えば、妬み、婦女誘拐、飢饉、孤児、交易、良い和人、悪い和人、悪叔父、子のない夫婦、六悪人、熊神、夜襲、ケナシウナルペ、村の滅亡・再生、疱瘡などがある。婦女誘拐モチーフにおいて、主人公の妻や許嫁を誘拐する悪人として登場するのは和人、神、魔神などである。婦女誘拐という共通のモチーフを通して、アイヌにとっての神、魔神、和人といった存在を比較関係におくことが可能になる。また、アイヌの村の滅亡・再生モチーフを持つ物語における、村の滅亡原因は疱瘡と妬みといった人災であって、例えば飢饉は自然災害に含まれ、滅亡原因にはならない。このようなモチーフと話型の相関関係から、アイヌ口承文学特有の認識論を抽出することが可能になる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

4: 遅れている

理由

資料の量が想定を大きく上回っていたため、研究計画が全体的に遅れている。そのため、当初の研究計画を縮小し、すべてのジャンルを網羅的に対象とするのではなく、散文説話に絞って分析を行うことにした。知里真志保遺構ノートの中の金成マツノートに含まれる188編中、散文説話は103編であり、昨年度はこのうち3.5割のモチーフ抽出を終えた。モチーフはエクセル表に入力して整理している。これによって、どの物語がどういったモチーフを共有しているか、どのモチーフとどのモチーフが同時に現れるか、などといったことが視覚的に一目でわかるようになる。

今後の研究の推進方策

実際の調査により、資料の分量が予想以上に多いことがわかったため、当初の研究計画を変更し、研究対象を散文説話ジャンルに絞ることにする。金成マツのレパートリーは彼女自身および親族のレパートリーの筆録が大部分をしめている。これらの物語群におけるモチーフの役割、モチーフを介した物語間の関係などを明らかにすることで、アイヌ口承文学的知性のあり方の一端を示し、アイヌ口承文学のテクスト分析のための方法論を構築する一歩としたい。今年度も引き続き、残りの資料の翻刻・翻訳、モチーフ抽出作業を継続してモチーフ・インデックスを完成させる。その上で、それを活用した具体的な物語の読解を行い、アイヌ口承文学の一つの解釈方法として提示したい。

次年度の研究費の使用計画

調査対象である金成マツ筆録ノートの全体量が想定を大きく上回っていたため、研究の進度が全体的に予定よりも遅れている。本研究はモチーフ・インデックスの作成と、それを活用した物語分析の実践の二段構えになっているが、現在はモチーフ・インデックスを作成している途中である。従って物語分析の段階に必要な書籍購入はまだ行っていない。そのため次年度使用額が生じた。
書籍は主に図書購入費あてる予定である。ただし、研究状況に応じて、資料の追加調査の必要が生じた場合には一部を東京‐札幌間の旅費にあてることもあり得る。

  • 研究成果

    (2件)

すべて その他

すべて 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)

  • [学会発表] アイヌ口承文学の認識論:疱瘡モチーフの物語を通して考えるアイヌ・エスノヒストリー

    • 著者名/発表者名
      坂田美奈子
    • 学会等名
      社会教育学会六月集会
    • 発表場所
      筑波大学
  • [学会発表] Refiguring Indigenous History: Through Ainu Stories of Village Regeneration

    • 著者名/発表者名
      Minako Sakata
    • 学会等名
      Uppsala Third Supradisciplinary Feminist Technoscience Symposium
    • 発表場所
      Uppsala University
    • 招待講演

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公開日: 2015-05-28  

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