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2014 年度 実績報告書

アイヌ口承文学的解釈学の創出

研究課題

研究課題/領域番号 23520208
研究機関東京大学

研究代表者

坂田 美奈子  東京大学, 総合文化研究科, 教務補佐員 (30573109)

研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2015-03-31
キーワードアイヌ / 口承文学 / エスノヒストリー / 歴史認識
研究実績の概要

本研究はアイヌ口承文学におけるモチーフの役割を明らかにすることによって、アイヌ口承文学の内容を解釈するための方法論を立ち上げようとする試みである。金成マツ筆録の散文説話や胆振・日高地方の散文説話に再帰的に現れるモチーフを抽出し、表にまとめてモチーフ相関図を作成した。この相関図は分類のためのモチーフ・インデックスとは異なり、再帰的に現れるモチーフとモチーフの関係やモチーフと話型・テーマの関係を可視化し、それによって個々のモチーフの概念やニュアンスを明らかにすることを可能にする。
例えば疱瘡のモチーフは、夜襲や嫉妬といった人災モチーフと話型を共有し、飢饉や津波、地震といった自然災害モチーフとは話型を共有しない。一方で、疱瘡は飢饉モチーフとも一定の隣接関係にあるモチーフとして現れることから、人災・自然災害の双方の性格を持つと同時にいずれにも完全には属さない現象として表象されており、極めてニュアンスに富んだ表象のされ方がなされている。更に疱瘡の流行・終息ともに和人に関わる問題として表象されない点はアイヌにとってのこの病の意味を考える上で重要である。
また、ポン・マチ(妻妾)というモチーフは、一般に子のない夫婦モチーフと接続し、妻が夫に勧めて別の妻を娶ったり、女性の側が強く望んでポン・マチになったりするというように肯定的に描かれる。一方、異文化人である山丹人が単なる好色のために娶るポン・マチは極めて否定的に描かれる。このようにモチーフ相関図によって、ポン・マチの概念と価値評価の振幅を明らかにすることができる。近世後半以降、蝦夷地において和人の支配人や通詞がアイヌの慣習を「真似て」複数のアイヌ女性を妻に持つといった例が記録されている。ポン・マチ概念のアイヌ口承文学的概念の幅を認識することによって、このような和人による「多妻制」をアイヌ文化的基準において検討することも可能になる。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2014

すべて 図書 (1件)

  • [図書] RE-Mindings: Co-Constituting Indigenous/Academic/Artistic Knowledges2014

    • 著者名/発表者名
      Minako Sakata, May-Britt Ohman, Hiroshi Maruyama, Kaori Arai, Jorge Calbucura, Gunilla Larsson, Eva J:son Lonn, Stefan Mikaelsson, Markus Nystrom, Marrie Persson, Agneta Silversparf, Kim Tallbear, Eva-Lotta Thunqvist, Tor Lundberg Tuorda, Vladislava Vladimirova, Feances Wyld and Lilian Mikaelsson
    • 総ページ数
      291(121-130)
    • 出版者
      The Hugo Valentin Centre, Uppsala University

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公開日: 2016-06-01  

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