研究課題/領域番号 |
23520210
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
黒石 陽子 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (40247268)
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キーワード | 黒本 / 青本 / 赤本 / 子ども絵本 |
研究概要 |
本年度は黒本・青本『義経一代記』における義経の鞍馬山における剣術修行の場面をめぐり、整版本『義経記』諸本の挿絵の分析、上方絵本における同場面の描き方、さらに黒本・青本『義経一代記』以降の江戸における黄表紙・合巻等におけるこの場面の扱いを精査し、当該本における表現の特色について研究した。 当該の黒本・青本は、整版本『義経記』には見られなかった場面の描き方を上方絵本の影響を摂取しながら新たに作り出し、画中の文章では読者と同じ視線で少年「義経」を描く方法を作り出している。これにより近世子ども絵本における伝承の扱いの特色を具体的に明らかにすることができた。 また連携研究者と研究協力者により黒本・青本『〔猿廻春花婿〕』、青本『鬼鹿毛の駒』、黄表紙『雷之臍喰金』、合巻『風俗女西遊記』、北尾政美画『〔頼光〕』『繪本英雄鑑』『繪本大江山』について分析研究を行った。 黒本・青本『〔猿廻春花婿〕』では百人一首で当時有名であった歌人を登場させ、歌の内容を面白く解釈してそれを物語化するという作法を用いていることが明らかになり、絵と文章の双方を拮抗させて表現していることが明らかになった。 その他、江戸と上方の絵本の作り方の相違、演劇作品と黒本・青本との関係とその表現方法の特色、雷に対する信仰や災害に対する江戸時代の人々の考え方など、多様な視点から子ども絵本の内容とその特色を明らかにすることができた。なおこれらは『叢』34号として研究誌にまとめ、広く近世文学者へ公開した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究対象の黒本・青本等の分析研究については、申請者の研究及び、連携研究者、研究協力者による研究の進行が順調であり、新見に富んだ成果が着実に現れている。一方一年目に予定した資料収集の進行が若干の遅れを見せており、25年度においては体制を整えて調査及び、資料収集に当たる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、黒本・青本を中心とした江戸の子ども絵本の研究を推進する。特に絵と文章との関係性を分析し、その表現方法を明らかにすることを目指す。またそれらを通して子ども絵本が作り出した伝承の形を明らかにしていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
黒本・青本等の子ども絵本の調査と資料収集。及び収集した資料の整理。さらに25年度に研究会で行う研究内容の成果のまとめとして、研究誌の作成と公開を行う。
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