研究課題/領域番号 |
23520211
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
石井 正己 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (30251565)
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キーワード | 昔話 韓国、中国、インド / 採集 / 出版 / 植民地 / 教科書 / 移民 / 民俗学 / 人類学 |
研究概要 |
2012年12月15日、東京学芸大学に「インドの昔話、その歴史と現在」を開催し、石井正己が「植民地と昔話研究」を行い、インド・ネール大学教授マンジュシュリ-・チョーハンの「インドの語り」、拓殖大学名誉教授坂田貞二の「ガネーシュ神を祀るガネーシュ・チャウト祭の語り」の記念講演に続き、シンポジウム「インドと昔話」を熊本県立大学准教授難波美和子の「インド帝国時代のインド昔話研究」、國學院大學栃木短期大學講師野村敬子の「インドから来た昔話」、石井正己の「インド昔話集の出版」の発表を行い、千葉大学名誉教授荻原眞子が「説話の道・人の道」の総括を行った。このフォーラムにより、イギリスの植民地統治に伴ってインドの昔話が発見され、やがてインド人自身の昔話採集や記録への関心をうながしたことが明らかになった。それとともに、帝国日本が進めた大東亜共栄圏の構想の行く先にインドがあり、そこでインドの昔話が古代と現代にわたって見いだされたことが見えてきた。 2013年3月発行の『帝国日本の昔話・教育・教科書』の第1部に、平成23年度に実施したフォーラム「中国・満州の昔話と教育」の、飯倉照平「中国「東北」をめぐる民間伝承」、全京秀「特務機関と人類学者が共に作った満蒙民族学」、千野明日香「「満洲」における昔話資料」、野村敬子「満蒙開拓青少年義勇軍」、石井正己「満州の日本語教科書と昔話」の各論考を収録した。これらの論考によって、中国・満州において民俗学者・人類学者・教育者などが行った昔話等の採集・記録・出版を踏まえた分析に基づく最新の研究成果を提示することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成23年度に実施したフォーラム「中国・満州の昔話と教育」の論考を報告書の一部に入れて発行し、日本が植民地統治下で行った中国・満州における昔話等の採集・調査・記録のあり方を検証することができた。また、ロシア科学アカデミー東洋古籍文献研究所が主催したニコライ・ネフスキー生誕120年会議において研究発表を行い、国内外の研究者との交流を通して植民地統治下の研究を東洋学の視点から考える示唆を得た。さらに、「インドの昔話、その歴史と現在」のフォーラムを実施し、イギリスの植民地統治によるインドの昔話の発見と、日本が大東亜共栄圏構想の行く先に据えたインドへの視線を明らかにすることができた。こうした研究の積み重ねによって、当初構想した植民地統治下の研究をよりグローバルな視野に立って考えることが可能になってきた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究によって日本が台湾・朝鮮・南洋群島・満州の植民地統治による昔話の採集・記録・教育の概観を把握することができ、さらに一方ではハワイ・ブラジル・満州の移民政策に伴う教科書と昔話の問題も見えてきた。そうした中で、韓国・中国・インドの研究者との学術交流が進み、博士課程在学者や博士号取得者の若手研究者の研究が急速に展開しつつある。私自身も韓国・インドにおける招待講演の計画があり、あらたにヨーロッパの東洋学と交錯してくる植民地時代の研究をテーマにフォーラムを開催する計画である。これまで収集した資料の分析や新たな資料の発掘に努めるとともに、国際的な視野に立った研究を推進してゆくための機会として、この研究を活用したいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
(1)韓国・日語日文学会における「植民地時代の文学と教育の位相」の招待講演(6月)、(2)台湾大学植民地時代資料の調査と収集(9月)、(3)フォーラム「インドの昔話、その歴史と現在」の報告書の印刷・発送(10月)、(4)フォーラム「植民地時代の東洋学 ネフスキーの業績と展開」の開催(11月)、内容は、趣旨「植民地時代の東洋学」東京学芸大学教授石井正己、講演「伊能嘉矩の科学的土俗研究」韓国・ソウル大学校教授全京秀、シンポジウム「ネフスキーの業績と展開」として、「金田一京助とネフスキー」千葉大学名誉教授荻原眞子、「オシラ祭文再考」東京学芸大学教授石井正己、「聖水信仰の発見─ネフスキーの提起と折口信夫の展開─」東京都市大学教授保坂達雄、(5)インド・ネール大学における「語りの講座」の招待講演(12月または3月)、のそれぞれを実施する計画である。
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