研究課題/領域番号 |
23520212
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
林 勉 東京学芸大学, (所属部局無し), 名誉教授 (50014858)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 萬葉集古写本 / 萬葉集校本 / 萬葉集の古点・次点・新点 / 青の変化・赭筆の識別 / 断簡と手鑑 / 注釈書 |
研究概要 |
1.新校本の底本とすべき西本願寺本については、原本複製に際して作った翻刻の文字を再確認して若干の修正を加えた。2.西本願寺本系統で最も近い田中本との校異を済ませてあるので、西本願寺本の各丁ごとに書き加える方法を考えた。西本願寺本と同系のいま一本である阿野本につき、国文学研究資料館にある同書の紙焼きを調査した。モノクロームながら鮮明で文字はよく分るが色は不明である。幸いに先年連携研究者と行った原本調査記録を使用した。西本願寺本のように異なった色で重書したものは後の色のみを使っているが、鎌倉後期の西本願寺本の色が江戸前期でどのような色を呈していたか変化を伺える。3.また新点本の中では京都大学所蔵曼朱院本(略称京大本)は京都大学図書館電子図書館によってカラーも鮮明であって恩恵大であるが、赭色の書入れはやはり識別困難な箇処もある。赭筆は次点本また新点本でも最初の寛元本の内容のものであるので比較する好内容のものであるので重要であり、電子図書館で調べた上で原本に当たって調査した。新点本の中でも、寛元本の神宮文庫本-細井本-無訓本、文永三年本の西本願寺本-紀州本-金沢文庫本、文永十年本の陽明本-温故堂本、大矢本-近衛本をそれぞれ比較している。4.断簡については著名な手鑑は展示のあるごとに実見しているが、それ以外に新資料も出ることあり、『校本萬葉集』新増補追補の後に新出のものがあり、研究協力者で未発表のものも確認している。5.研究注釈書では契沖の萬葉代匠記は第一に挙げられるものであるが、全集や『契沖研究』で本文や訓読の現行するものを一覧したのであり、さらに代匠記初稿本の自筆断簡を集めており、萬葉集の用字法から発見した仮名遣研究内容の書翰を入手し、ほぼ同内容であり、少なくとも複数の人に差出したことなども明らかになり、契沖の萬葉仮名遣いの研究の一端が明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1.萬葉集は四千五百余首の大部の外に漢文もあり、歌も長歌も多く、漢字と傍訓の仮名と二重になっていて作品量が大であり、漢字の文字・音韻の知識が必要である。2.阿野本や古葉略類聚鈔など原本の閲覧調査が困難な場合がある。
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今後の研究の推進方策 |
1.次点本の中でも歌数多く、しかも料紙が焼けていて朱、特に赭の書入れの判別がきわめて困難な元暦校本の調査は、ぜひ原本を閲覧調査せねばならず、研究協力者も多いので、所蔵者の理解をぜひ得たい。2.校本の底本の準備ができたので、各巻の校異の書入れの作業が次に来る大きな仕事である。
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次年度の研究費の使用計画 |
1.元暦校本の調査と共に次点本で歌数多い類聚古集はじめ類纂本として古今和歌六帖その他歌論書の主資料を調査するための出張費や人件費が見込まれる。2.校異作成の実務に対して膨大な時間と労力に対するかなりの出費が必要となる。
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