研究課題/領域番号 |
23520214
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
錦 仁 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (00125733)
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研究分担者 |
志立 正知 秋田大学, 教育文化学部, 教授 (70248722)
渡邉 麻里子 弘前大学, 人文学部, 准教授 (30431430)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 藩主の文学活動 / 領内巡覧記 / 歌枕・名所 / 地誌の作成 |
研究概要 |
予定していた太平洋側の一関・仙台方面の図書館・博物館の資料調査が思うように出来なかったが、その分を弘前・秋田・富山・東京・香川の国会・県立・市立図書館等に調査対象を移して行った結果、十分な成果をあげることができた。また、その成果をもとに全国学会で報告・発表した。 6月に新潟で説話文学会を開催し、シンポジウム「地域と説話──和歌・歴史・修験」において研究成果を報告・発表し、フロアーの参加者も加えて討論をした。パネラーは錦(兼・司会)、久野俊夫、志立正知(司会・錦)。内容は本研究のテーマそのものである。3人の報告内容はまもなく説話文学会の機関誌に論文として掲載される。 そのほか大きな収穫の一つは、国学者の和歌思想は藩主の文芸活動(和歌・地誌・名所に関する)に大きな影響を与えたが、本居宣長そして平田篤胤・富樫廣蔭の流れを汲む国学者堀秀成の著作(自筆稿本)を多量に発見し、内容分析したことである。その内容の特色は、宇宙の始発から和歌が存在し和歌の歴史と日本の歴史を同一視するところにあり、幕末にかけてその傾向が強まってくる。自分の領地を地誌に描くことは、そういう認識と連動していることが具体的にわかってきた。 国学者の和歌思想は、会津藩主・弘前藩主などに大きな影響を与えた吉川神道と共通性をもつことがわかった。これも大きな収穫である。吉川神道の講義を聴いた弘前藩主のノートがすでに活字になっており、まだ分析・考察されておらず、新しい研究視界を切り開くことが出来た。 研究協力者を数人募り、一緒に調査・分析・討論をした。藩主の文芸活動に和歌のほかに俳諧も加えて調査をし、より広い視野のもとに研究を進めることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は何よりも各地の図書館・博物館等に行って資料を発見し、収集し、分析することにある。東日本大震災によって予定の計画を変更せざるをえないところもあったが、その分は日本海側の図書館・博物館等の調査で十分に補うことができた。 説話文学会において、これまでの研究成果を発表し、また類似の研究テーマで活動している研究者と交流した。また、その機関誌に研究成果(論文)を掲載できた。また、藩主に影響を与えた国学者と吉川神道の和歌思想を比較・解明する方法を見いだした。さらに、詠歌と共に俳諧をたしなむ藩主がいることがわかり、その実態の解明が必要であることがわかった。 よって、初期の目的は十分に達成された。かつ、次年度において研究・解明すべきテーマや内容が明確になってきた。
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今後の研究の推進方策 |
東北各地の藩主の文学活動(和歌・俳諧・地誌)と名所の関係および地誌作成に至る過程を解明するうえで第一に必要なのは新しい資料の発見である。一例をあげると、藩主たちの領内巡覧記や側近藩士の書いた旅行記の類(写本)を発掘し、その内容を分析して和歌に対する考え方、歌枕・名所に関する考え方を明らかにし、それをもとに諸藩で行われた地誌作成のプロセスを跡づけることである。 今後は、これまでの成果をふまえて、更に各地の図書館等に調査に行って新資料の発見に努める。弘前市立図書館の未調査の和歌・地誌などの資料、一関市立博物館の藩主たちの詠歌資料、富山市立図書館の山田文庫の和歌資料などを重点的に調査する。 また、連携研究者を4~5人と協力し、それぞれ発見した資料とお互いの検討結果を持ち寄り、新潟大学を会場に高度の検討会を開催する。
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次年度の研究費の使用計画 |
東日本大震災により太平洋側の図書館・博物館等の調査が思うようにいかなかったが、24年度の前半にその分をとりもどすため、弘前・一関・富山ほかの図書館・博物館等の調査を連携研究者の協力を得て積極的に行う。併せて本年度の計画を予定通り実行する。すなわち研究費は主に資料収集の旅費および連携研究者を複数入れた共同による調査と検討会の実行に使用する。 キーワードに関連する活字資料(市町村史や刊行資料集)や研究書が意外と少ないことが判明したが、連携研究者の協力を得て探しだし、購入およびコピーをとる。また、新しく発見した写本などの原資料を撮影・収集したり、その紙焼き写真の購入に使用する。 また、入手した新資料が多い。そのうち重要なものを学術誌に解説を加えて発表したい。そのための翻字・翻刻の作業を院生などに手伝ってもらう謝礼に使用する。
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