研究課題/領域番号 |
23520214
|
研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
錦 仁 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (00125733)
|
研究分担者 |
志立 正知 秋田大学, 教育文化学部, 教授 (70248722)
渡邉 麻里子 弘前大学, 人文学部, 准教授 (30431430)
|
キーワード | 藩主 / 和歌 / 地誌 / 歌枕 / 俳諧 |
研究概要 |
震災後、岩手・宮城・福島の3県のホテル事情が悪く、思うように資料調査が行えないが、秋田市・仙北市・一関市・米沢市・仙台市・東京その他において、連携研究協力者とともに調査を行い、十分に補うことができた。 現在、その中の重要な資料について翻刻・分析を進めている。 発表した論文は、「伝承資料集成 米沢市立米沢図書館蔵『屋代神社霊顕記』の翻刻と考察──山形・新潟の弥三郎婆伝説」(『人文科学研究』第132輯、新潟大学人文学部研究紀要、平成25年3月29日、41、94頁)。著書は『宣教使 堀秀成──だれも書かなかった明治』( 三弥井書店、平成24年12月20日。総411頁)を刊行し、読売新聞の書評(全国版)などで高く評価された。また、論文「和歌を超えて、時代を超えて」(説話文学会編『説話から世界をどう解き明かすのか─説話文学会設立50周年記念シンポジウム[日本・韓国]の記録』笠間書院、平成25年6月30日(予定))を発表した(現在、印刷中)。 いずれも、江戸期の東北地方における藩主の和歌活動および歌枕形成に向かって結集された思想に注目し、それを基盤にした資料の翻刻・考察であり論考である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
震災後、岩手・宮城・福島3県のホテル事情が悪く、連携研究協力者を入れた複数名による調査旅行がなかなかできない状況にある。その困難を乗り越えるべく、秋田・山形などの日本海側の各県での資料調査を進めてきた。ようやく仙台市・福島市の図書館等の調査が可能となったので資料調査を行った。 藩主の領内巡覧と連動して編纂された地誌があることは前年度の調査に基づく論文で明らかにしたが、本年度は、それを更に確実に証明すべく、秋田藩の全藩主の領内巡覧を調査によって収集した資料を分析し、それらと家老や菅江真澄らが関与した地誌・旅行記などのとのかかわりを考察した。また、地域の伝説は地域の歴史や地誌をもとに形成され、藩主の治める地域を称揚する意図を秘めているので、そうした伝説を記す縁起書も探しだし、翻刻・分析・考察した。さらに、江戸末期の仙台藩主の領内巡覧のありさまを伝える記事をもつ幕末・明治期の国学者堀秀成の著作を発掘し、その伝記を明らかにしつつ、藩主に影響を与えた国学者たちの和歌思想を解明した。 震災による研究推進の困難さはあるが、それを乗り越えて、交付申請書に記載した「研究目的」は達成されつつある。
|
今後の研究の推進方策 |
連携研究協力者として志立正知(秋田大学。副学部長職に就任のため研究分担者を辞退)、平林香織(岩手医科大学)、田村正彦(大東文化大学非常勤講師)ほかにお願いしてある。かれらの協力を得て、秋田藩・一関藩・仙台藩などの藩主の文学活動と歌枕形成とのかかわり、かつ、地誌作成とのかかわりを多様な角度から明らかにしていく。 その一つとして、6月ないし7月に秋田市に集まり、連携研究協力者とこれまでの調査研究の報告し討論を行うシンポジウムを予定している。日程などはほぼ決定した。このシンポジウムをもとに報告書(来年3月頃刊行予定)を創る。 なお、資料調査は、盛岡市、仙台市、一関市などを予定している。重要な資料がまだまだ埋もれてるので、発見・分析に努める。
|
次年度の研究費の使用計画 |
8月中に秋田大学の施設を会場にシンポジウム・実地踏査を行う。連携研究協力者および本研究に関連する研究をしている研究者を招待し研究発表をしてもらい、かつ、コメンテーターを務めてもらう。このシンポジウム・実地踏査には、秋田在住の郷土史家等の研究者にも参加を呼びかけ質疑応答をし、本研究の成果を社会還元する。また、秋田藩・仙台藩の資料探査・収集・分析のため調査旅行を行い、12月以降、本研究の最終的なとりまとめに入り、研究成果報告書の作成をする。
|