研究課題/領域番号 |
23520215
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
鈴木 孝庸 新潟大学, 人文社会・教育科学系, フェロー (90143742)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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キーワード | 平家物語 / 平曲 / 平家琵琶 / 平曲譜本 / 平家正節 / 波多野流 / 當道資料 |
研究実績の概要 |
本研究は、平家物語の文章表現の形成に平曲(平家琵琶、平家語り)がいかに関与したのか、また琵琶法師あるいは平曲伝承者は、どのようにして語り(平家物語の音楽的表現)を伝承したのかを考えることを大きな目標としている。そのために、「平曲の実地演誦」を平曲演奏家・橋本敏江師について習得稽古することを基礎とし、文字資料の「平曲譜本」「平曲指南書」「當道関係資料」などを網羅的に調査整理することを当面の課題として、継続的に行っている。 本年度は、第一に臺灣大學圖書館特藏組所蔵平曲譜本調査を二回行った。四年前から始めているのだが、ここ数年所在不明であった波多野流譜本の所在が明らかになった。これにより、1985年に確認済みの平曲譜本四点(平家正節零本四冊。平家正節零本十五冊。平家物語零本三冊。波多野流譜本零本二冊。)が揃ったことになる。全冊私の点検支援のもとに補修作業が行われた。本年度の調査では、臺灣大學の波多野流譜本も、日本国内の同類本と比較して、曲節や墨譜の本文への配合に関して、独自の傾向が認められるようである。臺灣大學圖書館特藏組へは、毎回の調査終了時に調査内容の報告書を提出してきたが、8月の調査期間中に出版に向けての話しあいが進み、3月の調査期間中に契約を結んだのである。臺灣大學の平曲譜本を影印電子版で、三回(波多野流譜本、平家正節、平家物語の順)に分けて出版する計画である。日本国内の平曲譜本の検討結果も解題に盛り込む予定である。 第二に、當道資料関係に関しては、あらたに當道略記二点(巻子本、冊子本)當道式目一点などを入手した。これまで収集済みの資料と併せ整理検討しながら、當道資料集成として刊行する予定である。 第三に、平曲譜本の入手は次の通りである。平家正節零本四冊。平家正節零本二冊。平家正節零本二冊。平家正節零本一冊。いずれも、平家正節の体系を考察するために有益な情報を持っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
臺灣大學圖書館特藏組の平曲譜本に関して、4年前の調査開始時に、先方から出版関係の打診があったのだが、その後やや停滞気味であった。このたび契約まで進んだことで、大いに進展したのである。出版は電子版となったので、影印部分はともかくとして、解題にさしあたり制限がなさそうであるから、これまでの蓄積を大いに盛り込もうと考えている。 また、當道資料集成に関しては、この年度内に原稿提出を期している。 というわけで、日本国内で調査すべき資料がまだいくつか残っているが、おおむね進んでいると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度が、最終年度にあたっているが、第一に臺灣大學圖書館特藏組所蔵波多野流譜本の検討と解題を執筆する。これに日本国内の波多野流譜本に関する検討結果をもりこむ予定である。 第二に、當道資料集成の刊行。平家勘文録、當道要抄、當道大記録など、主要な當道資料を影印と翻字と解題を併せて刊行する予定である。
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