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2011 年度 実施状況報告書

文学と音楽の理論的協同にもとづく近現代日本文学の音楽表象に関する分析と検証

研究課題

研究課題/領域番号 23520219
研究機関信州大学

研究代表者

山本 亮介  信州大学, 教育学部, 准教授 (00339649)

研究分担者 小野 貴史  信州大学, 教育学部, 准教授 (10362089)
研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2014-03-31
キーワード日本近代文学 / 文学理論 / 音楽理論 / 虚構理論 / 物語行為
研究概要

2011年度は、音楽作品と文学表現の関係を考察するための諸理論について、主に検討をおこなった。音楽体験の記述行為のあり方をとらえるうえで重要な観点として、特に文学における虚構理論へ着目し、その理論展開の現状と課題を明らかにした。 まず、近代小説における虚構性の位置づけを確認し、従来の虚構指標論の諸観点を整理、その問題点を確認した。そこから、言語哲学における言語行為論を導入した虚構理論の展開に着目し、言語論的転回以降のラディカルな虚構観との接合を検証した。加えて、虚構言説の受容についても議論を整理し、テクストの虚構性と読書行為の関係に含まれる曖昧さの把握を現在の課題として位置づけた。さらに、具体的な分析例として、一人称小説と随筆作品を取り上げ、上記に挙げた理論的観点から両ジャンルの相異について考察した。その際、特に音楽体験の記述行為とも深く関わる一人称回想体言説の物語性を論点に掲げた。そして、一人称テクストの物語性に接するとき、作者・語り手・作中人物の関係を軸とする現実/虚構の想定は、極めてファジーに機能しており、そうした虚実の曖昧さと物語行為・受容の結びつきは,近代の文学言説一般に通じることでもある、との結論に至った。 こうした理論考察にもとづき、「モオツァルト」ほか小林秀雄による一連の音楽批評などを対象に、音楽体験に関する表現行為の分析を開始し、特に音楽体験の回想記述における虚構性を軸に、従来の研究の整理と検討を行った。また、文学理論におけるパラテクスト概念を音楽創作および音楽受容の考察に応用し、歴史的な検証をおこなったうえでその問題性を指摘した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究初年度である2011年度は、理論上の検討を主な課題として計画した。文学表現の創造・受容における虚構性の問題、および音楽理論におけるパラテクスト概念の位置づけを中心に、研究を進めた。これによって、文学と音楽における協同理論の構築といった本研究の目的を果たすための基礎が固まった。また、日本近代文学領域および音楽領域の両方で、具体的な作品に即した検討も進めており、音楽の言語表象に関する創作・受容のメカニズムの解明等についても、研究の方向性が打ち出せた。

今後の研究の推進方策

次年度は引き続き、具体的な文学作品、音楽作品に即して、音楽(体験)の記述行為、および音楽創造・受容における言語表現の機能、の二点を理論的に検証していく。文学作品については、音楽批評に加え、小説作品も検討対象とし、文学表現の虚構性と音楽体験記述の虚構性との関連を詳しく検討する。なお、本研究組織の特性を生かし、より学際的な研究を展開するとともに、みずからを創作者(作曲家兼演奏者)と記述者(文学者)の関係モデルとして、作品検討の参考とする。

次年度の研究費の使用計画

文学領域、音楽領域に関わる和洋文献資料の収集、記述対象となった各種音源資料の収集、学会・研究会への参加費(旅費)などを中心に使用する。なお、年度末に研究代表者が異動をおこなった関係で、研究費の一部を次年度へと繰り越したが、当該研究費と翌年度以降に請求する研究費を合わせることで、研究代表者と研究分担者の打ち合わせの頻度を維持することが可能となる。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2012

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)

  • [雑誌論文] 音楽におけるパラテクスト性2012

    • 著者名/発表者名
      小野貴史
    • 雑誌名

      信州大学教育学部研究論集

      巻: 第5号 ページ: 109-122

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 虚構理論から考える一人称小説と随筆の偏差2012

    • 著者名/発表者名
      山本亮介
    • 雑誌名

      信州大学教育学部研究論集

      巻: 5号 ページ: 55-67

    • 査読あり

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公開日: 2013-07-10  

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