研究課題/領域番号 |
23520226
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
妹尾 好信 広島大学, 文学研究科, 教授 (10171357)
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キーワード | 書誌学 |
研究概要 |
平成24年度は、前年度に引き続いて、岩国市中央図書館が所蔵する和装図書の閲覧調査を行うことが研究の大半を占めた。目録が公刊されておらず、その存在が世に知られていない資料群の悉皆調査が何よりも優先すると考えたためである。 図書館が受け入れてNDCによる登録番号を付し、台帳(館内整理用目録)に記載されて書架に番号順に配置されている和装図書について、1点ずつ閲覧して、書誌情報をカードに記入する。並行して、調査補助者としてほぼ毎回同行した大学院生に依頼してデータをエクセル入力するとともにカードの書誌情報の確認を行うという形をとって、調査データの正確を期した。 和装図書の多くは、明治40年代から昭和20年代にかけて、地元の旧家や名士から当時の町立岩国図書館、市立岩国図書館、吉川報效会岩国図書館へ寄贈されたものであり、図書には寄贈者名と受入年月日が記載されているので、大抵の図書は寄贈者と寄贈時期とが判明する。寄贈者には、岩国出身の政治家、官僚、軍人、実業家などとして著名な人物が多数おり、寄贈者名によって図書を分類すると、おのずとその寄贈者の蔵書の実態が見えてくる。その人の趣味や関心のあり方のみならず、有名人からの献呈本も多いので、その人の交友関係や人脈をたどることも可能になる。したがって、郷土の偉人の伝記研究のための資料としても少なからぬ利用価値が見出される。 なお、これらは一見、本来研究の中心であるべき吉川家伝来本からは遠い資料であるようであるが、寄贈者が岩国藩士として生まれていたり、近世において代々吉川家に仕えていた家の出身である場合もあるので、広い意味では吉川家由来本の一部と見なすことも可能であると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
岩国市中央図書館所蔵の和装図書の悉皆調査を平成24年度中に終えることを目標にしていた。そして、予定通り、平成25年3月までの調査で、書庫内の書架に配置されている和装図書については書誌情報のカードへの記入を終了した。エクセルへのデータ入力も8割方済んでいるので、概ね順調に進展していると言ってよい。ただし、同図書館には、書架に配置されず、未登録のまま段ボール箱に入れられている和装図書が若干数存在する。それらの調査は、平成25年度に持ち越した。 また、平成24年度の成果として、調査済み図書のうち歴史関係の書目について、広島大学大学院文学研究科附属内海文化研究施設発行の『内海文化研究紀要』第41号に「岩国市中央図書館所蔵和装図書目録稿(2)―歴史の部―」を掲載した。その際、和装図書の主な寄贈者の伝記についても略述した。成果の公刊も着実に進んでいると言ってよい。
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今後の研究の推進方策 |
4年間の研究期間の折り返し点を迎えた。今後も、当初の研究実施計画に従って研究を推進することになる。 岩国市中央図書館所蔵の和装図書の閲覧調査およびデータ入力作業は年度の早い時期に終了し、岩国徴古館蔵書の調査へと進みたい。月に1~2回は1泊2日程度の調査旅行を行って研究を着実に遂行したい。一人でカードへの書誌情報記入とデータ入力の両方を行うと効率が悪いので、平成25年度の調査にもなるべく調査補助者として大学院生を同行したい。 岩国徴古館の蔵書には、簡略な書誌情報ながら電子データが存在し、ウェブサイトで公開されているので、それを補い追加する形で調査を進めることが可能で、効率はよいはずである。調査には全面的な協力が得られる予定で、円滑に進められることと思う。
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次年度の研究費の使用計画 |
岩国市中央図書館ならびに岩国徴古館への調査旅行を月に1~2回、1泊2日で行う。予算費目中の「旅費」をこれにあてることになる。また、データ入力と書誌情報の確認のため、調査補助者として大学院生を同行したいので、そのために予算費目中の「謝金」を使用する。昨年度と同様、予算全体に占める「旅費」「謝金」の割合が大半を占めるのは、そういう事情による。 予算科目の「物品費」は、分類目録作成のための資料となる図書や文具・メディア類の購入費である。
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