研究課題/領域番号 |
23520226
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
妹尾 好信 広島大学, 文学研究科, 教授 (10171357)
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キーワード | 書誌学 |
研究概要 |
平成25年度は、まず、前年度までに引き続き岩国市中央図書館が所蔵する和装図書の閲覧調査を行った。前年度までと同様に、調査カードによる書誌データの収集とエクセルによるデータ入力を並行して行った。データの入力には、補助者として調査に同行した大学院生の協力を得た。そして、平成25年6月までに一通りの調査を完了し、その後は、数回に分けて調査カードのデータ確認と蔵書印の撮影作業を行った。データの確認とともに、目録化の作業も行い、本年度は、NDC600番台(産業部)までの目録化を終了した。 そして、平成25年7月から、岩国徴古館が所蔵する古典籍資料の調査を開始した。岩国徴古館には、「岩国徴古館資料」と「吉川家寄贈図書類」の二つの資料群があり、それぞれ数百点の和漢古典籍が含まれている。両資料群はともに目録が作成され、公刊されているが、掲載されている書誌データはごく簡略なものであり、誤りや不備も少なくない。そこで、目録のエクセルデータの提供を受け、それに基づいて書誌データを増補訂正するという形で調査を行うことにした。岩国藩主吉川家の旧蔵書である「吉川家寄贈図書類」の方が重要と判断し、そちらの調査を優先的に行うことにした。 岩国徴古館では、ウェブサイト上に「収蔵資料検索システム」を置き、目録掲載データを検索・閲覧できるようになっている。調査済みデータをこのシステムに乗せればすぐに詳しい書誌データが公開でき、広く利用が可能になるので、目録の大分類ごとにデータを更新していくことにした。平成25年度末までに、「謡・能楽」「和歌・俳諧」「紀行文その他」など文学関係を中心に450点ほどのデータを更新して一般の利用に供している。 なお、岩国市中央図書館・岩国徴古館とも本研究の趣旨を理解・共感して下さり、全面的な協力が得られているため、両館における閲覧調査は極めて円滑に遂行できていることを明記しておく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
岩国市中央図書館が所蔵する約1500点の和装図書資料の調査とデータ入力を早い時期に完了したのは当初の予定通りである。調査済み図書のうち、NDC分類300番台から600番台までの書目について、広島大学大学院文学研究科附属内海文化研究施設発行の『内海文化研究紀要』第42号に、「岩国市中央図書館所蔵和装図書目録稿(3)―社会科学、自然科学、技術・工学、産業の部―」を掲載し、併せて、全書目の中から幕より戦前までの岩国市とその周辺にあった学校の旧蔵書を取り上げてデータを解析、各学校の沿革を記述し蔵書印の印影を掲げた。掲載誌の紙数の制限から目録は分載せざるを得ず、あと3回程度必要だが、すでにデータ収集は完了しているので、今後も順調に公開できるはずである。 そして、岩国徴古館が所蔵する古典籍の調査も平均して月2~3日のペースで行い、着実に進行している。調査済みデータの一部は同館ホームページ上の「収蔵資料検索システム」に掲載し、すでに一般の閲覧が可能になっている。それまでのデータがごく簡略なものであったことから、詳しい書誌データの提供は研究者や一般利用者を裨益することが大であると思われる。平成25年度末までに「吉川家寄贈図書類」のうち、約半数を調査した。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は本研究の最終年度である。今後もできる限り当初の研究計画に従って研究を推進するつもりである。 中心になるのは、昨年度に引き続き岩国徴古館が所蔵する古典籍資料の閲覧調査と書誌データの公開である。月2~3日のペースでコンスタントに調査を行い、成果を随時公開していきたい。現在行っている「吉川家寄贈図書類」のうち調査対象となる和装図書の調査は年度内に確実に終了させたい。 ただし、もう一つの「岩国徴古館資料」の悉皆調査はなかなか難しい。図書館ではなく博物館である岩国徴古館の収蔵資料は多岐にわたっており、図書資料はそのうちのごく一部に過ぎない。古文書や書画類と一緒に目録化されているため、古典籍の判別自体必ずしも容易ではなく、出納も手間がかかる。また、つねに新収資料が加わってもいる。寄贈資料と購入資料があって伝来もさまざまである。徴古館の学芸員と綿密に相談してそれら資料の扱いを検討する必要がある。 本研究は、岩国市に伝存する古典籍の実態を調査してなるべく詳しい書誌データを作成し、広く多方面の研究者や一般の利用に供するために行う基礎的研究である。悉皆調査を急いで書誌データを簡略化することは避けたい。あと1年の研究期間でどこまで調査対象とすべきか、なるべく早く見極めて今後の研究計画へとつなげていきたい。
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