平成26年度は、前年度に引き続いて、岩国徴古館が所蔵する「吉川家寄贈図書類」の閲覧調査を中心に活動した。同館が刊行している目録に従い、文学関係書からその周辺諸分野へという順で閲覧調査を進めた。書誌データの入力作業には、補助者として調査に同行した大学院生の協力を得た。調査を通じて得た書誌データは、岩国徴古館がホームページ上で運営する「収蔵資料検索システム」に載せて、一般の閲覧・利用に供している。 調査の拠り所とした既刊の目録は簡略なもので、書誌学的な情報はごく限られ、分類法や資料名の認定などにも不備が少なくない。岩国徴古館スタッフの希望もあって、できる限り正確で詳細な書誌データの作成を念頭に置いたため、当初の目論見通りには進行できず、研究期間の最終年度になったが「吉川家寄贈図書類」のすべてを調査することはできなかった。しかしながら、研究代表者の専門である日本文学および語学、その周辺の歴史学、哲学・宗教、軍学など、人文・社会学系の書目については調査を終えることができた。残された自然科学系の書目と膨大な漢籍類については、研究期間終了後も引き続き調査を行って、早い時期の完成を目指したい。 岩国徴古館の調査と並行して、前年度までに一通りの調査を終了した岩国市中央図書館の和装図書についても、目録作成に向けて書誌データの確認と旧蔵書印の撮影のため4回にわたって閲覧調査を行った。本年度はNDC700番代、800番代の「芸術、言語の部」の目録を作成した。併せて、岩国藩の著名な国学者である上林諸史とその周辺人物たちの旧蔵書を蔵書印や書き入れによって確認し、近世岩国における国学の有り様を知ることのできる貴重な資料であることを論述した。残る「文学の部」の目録は次年度以降2回に分けて刊行の予定である。
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