平成26年度は、これまでの研究の総括を意識しながら研究に取り組んだ。外地引揚者の文芸関連資料の調査・収集では、1950年代から60年代における資料を中心に実施し、植民地期の朝鮮半島および旧満洲地域の日本語文芸資料と照らし合わせながら検討を行った。それとともに、1960年代後半から70年代にかけて登場する外地引揚者の文芸および回想録に関する資料調査も進め、大連出身の清岡卓行による小説『アカシヤの大連』(1970年)や『海の瞳――原口統三を求めて』(1971年)を経由して、原口統三の創作文芸に関する分析を『二十歳のエチュード』(1947年)を中心に行った。 原口統三は、第一高等学校在学中に自殺した夭折詩人として知られるが、厳密には外地引揚者ではないものの、幼少期から少年期を朝鮮や大連で育った学歴エリートであることから、『二十歳のエチュード』から主に戦中期における外地・内地表象の問題を検証した。この研究成果の公表としては、〈東アジアと同時代日本文学〉フォーラム第二回国際シンポジウム「大衆化社会と日本語文学」(北京師範大学、2014年10月26日)における口頭発表「原口統三『二十歳のエチュード』をめぐる座標系――夭折詩人と大衆化」、また第54回愛媛県高等学校教育研究大会国語部会(松山市にぎたつ会館、2014年12月22日)における学術講演「つむがれた措辞/素地――原口統三『二十歳のエチュード』より」がある。学術論文としては平成27年度中に公表予定である。
|