研究課題/領域番号 |
23520232
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
山田 俊治 横浜市立大学, 都市社会文化研究科, 教授 (10244485)
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キーワード | メディア史研究 |
研究概要 |
本年度は、研究協力者の尽力によって、明治八年以降の紙面が紙媒体で入手することができ、紙面の年表化を進めることができた。その中から、早稲田大学古典研究所の依頼で出席した「「文と「文学」」をめぐるワークショップで、福地源一郎の「文」学認識について発表した。そこでは、主に「東京日日新聞」社説に掲載された福地の言文一致論を検証して、その言語観を探った。 それを論文化した「福地源一郎の「文」学」を「アジア遊学」2013年3月号に発表できた。福地は、明治七年十二月に「東京日日新聞」に入社の最初の社説から文章論を展開し、そのほか「文論」や言文一致についての論考を退社以降も発表していた。それらを逐一検証した結果、福地の言語観は一貫して文章意識に連ねかれたものであったことが明らかになった。これは、「東京日日新聞」の言語観を代表するものと考えられ、新聞の文体を形成する上で重要な示唆を与えてくれた。それは、岸田吟香の俗談平話の話体が明治十年代には減少していくうえで、状況依存型の話体が福地などの文章意識によっていることを推測させてくれるからである。 本研究以外では、岩波文庫の『日本近代短篇小説選 明治篇1』を編集、注解解説を執筆して、2012年12月に出版した。他には、「文学」の依頼で、2013年3月号の円朝特集に、「新聞改良と円朝速記本」を発表した。この論文では、明治20年前後の「中新聞」化する新聞改良について、多くの知見を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
この原因は、ひとえに前年度の「東京日日新聞」の紙面を紙媒体で入手することが遅延したためである。しかし、今年度は、研究協力者の複写作業が順調に進んだため、当初の予定に近いところまで回復した。しかし、まだ明治19年以降が残っているため、早急に複写作業を終える予定である。 年表化は、昨年度の遅れを取り戻すため、研究の多くの時間を費やしているが、明治10年代が残っている。残りの1年で完成を目指して進めてゆきたい。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、早急に「東京日日新聞」の紙面を紙媒体で入手する複写作業を推進して、その年表化に当たることである。研究協力者には、比較対象となる他の新聞や雑誌についても、複写作業を継続的に依頼する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
まず必要なのは、複写作業を委託した研究協力者への謝金、および複写代金や製本代である。これらは、本学の規定に従って実施していくつもりである。 さらに、「東京日日新聞」の背景の文化状況を探る必要からも、古書の収集も予定している。現在までは出張旅費の支出はないが、調査や学会、研究会への出席も研究費の範囲内で、できるだけ実施していくつもりである。
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