本研究の目的は、富永太郎草稿、ノート、絵画、手紙等のデータベース化を通じて、人文科学領域に於ける画像データベースのあり方を検討し、優れた研究支援ツールの開発を目指すものである。ここで構築するデータベースは、文学テクストの草稿のみならず、絵画資料をも画像として組み込んだものである。 本年度は、既成の草稿データベースの構築理念の検討をふまえ、日本近代文学会6月例会(2013年6月、於跡見女子大学)及びシンポジウム「東洋学におけるテキスト資料の構造化とWebの可能性」(2013年12月、於京都大学)において富永太郎草稿データベースを例として以下のような新たなデータベースのあり方を提案した。1.草稿の解読テクストを項目とすること。2.解読テキストは、デプロマティックあるいはTEI方式のテキストによることが望ましい。3.データベース方式としては、現状ではXLMによる記述がその後の発展性を考慮したとき最も望ましい。 これと併行して、富永太郎草稿データベースの作成をすすめ、これまで未整理であった富永太郎全詩篇の生成過程を明らかにし、大妻女子大学紀要及び大妻国文に発表掲載した。これによって、データベース構築のための準備が完了したことになる。なお、パイロット版として、詩帖データベースの作成を行った。 画像データベースによる文学テキストの生成研究としては、作成中の草稿データベースを試用して「恥の歌」の生成過程の考察により、富永太郎の詩作の一つの傾向を明らかにした。この成果については、2014年刊行予定の『近代文学草稿原稿研究事典』に掲載される(入稿済み)。
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