平成25年度は、平成23年度からの「基盤研究C」の3年目に当たり、「源氏物語諸伝本の再検討を通して新提言へ」の研究テーマのもと、1『源氏物語』の巻ごとに主要本文十数本を翻刻して対校一覧を作成しデータ化する、2そのデータ資料などに基づいて、各研究委員が研究会で研究成果を発表し、それを年度末(26年3月)発行の『研究報告書』に掲載して公開するという形で進めた。 1では、「空蝉」(15本)、「夕顔」(10本)の、主要伝本の翻刻と、その対校一覧を作成して報告書に掲載し、同時にデータベース化の処理を行ない、公開可能な状況に仕上げた。これは、平成19~22年度の「基盤研究A」での「花散里」「野分」「柏木」「早蕨」の対校一覧とデータベース化、及び平成23~24年度の「基盤研究C」での「桐壺」「蓬生」「関屋」「帚木」の対校一覧とデータベース化の作業を引き継ぐものであり、同様の作業は、平成26~28年度の「基盤研究C」においても継続して進めている。 2では、平成25年12月21日の共同研究会(於國學院大學)において、6名の研究者が、以下の発表を行ない、質疑応答を経て『報告書』に掲載した。豊島秀範「河内本の本文の特徴─「桐壺」「空蝉」を中心に─」、中村一夫「仮名文テキストの文字遣─語と表記の関係性─」、上原作和「方法としての池田亀鑑─『校異源氏物語』の成立と桃園文庫─」、上野英子「覚勝院抄の本文と註釈」、田坂憲二「神宮文庫本『紫明抄』について」、伊藤鉄也「新規採択の科研基盤(A)・海外における源氏物語研究と各国語翻訳について」。 本年で「基盤研究C」の3年間を終了したが、引き続き平成26年度から3年間の予定で、源氏物語本文の巻ごとの対校一覧とそのデータ化の研究作業を継続することとなり、視覚的に明確な形のデータ化の完成を目指している。
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