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2015 年度 実績報告書

覚一本『平家物語』の遡行と伝播・受容についての基礎的研究

研究課題

研究課題/領域番号 23520242
研究機関駒澤大学

研究代表者

櫻井 陽子  駒澤大学, 文学部, 教授 (60211934)

研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2016-03-31
キーワード国文学 / 中世文学 / 平家物語 / 本文 / 諸本 / 覚一本 / 受容
研究実績の概要

前年度で終了する予定であったが、諸事情が出来し、今年度まで延長した。その余祿を受け、新出の覚一本伝本の調査を行うことができた。
『平家物語』には多くの異本があり、その本文は大小様々に揺れているが、例外的に覚一本(語り本系のうちの一方系の一種)は語りの定本として固定的に捉えられ、覚一本の権威性が定説として説かれてきた。しかし、伝本という内部資料、また、覚一本を用いた能作品という外部資料を詳細に分析することから、覚一本の本文も、規模は小さいもののやはり流動していること、類似してはいるが同一ではない覚一本が多く生まれていることを明らかにしてきた。これが、新出伝本の調査により、更に明確に実証できた。
新出伝本からうかがえる本文流動には、二つの大きな方法がうかがえる。一つは、覚一本にはない章段を増補していくこと、もう一つは細かな文節、あるいは単語レヴェルでの改編を行っていくことである。これらには、伝本毎それぞれに手元にある、覚一本ではない他の一方系の本文(京師本が一番近い)が用いられることもわかってきた。よりよい本文を作る、あるいは既知の本文に近づけるために手を加えていると思われる。つまり、覚一本本文には不満があった、もしくは手を入れることも可能であったと理解できる。覚一本の権威性が説かれて久しいが、少なくとも、本文の権威性については再考すべきである。
覚一本は一方系の最古にして最高の本文ではない。覚一本を遡行し、その成立を考えるには、今まで覚一本から直線的に下って成立していったとされてきた他の一方系の諸本を検討しなくてはならない。
次なる課題は、覚一本以外の他の一方系の諸本、また、他の語り本系本文(百廿句本など)も含めて、どのように覚一本及び語り本系(一方系)の成立を探るのか、その方法論を模索し試行することである。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2016 2015

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] 平家物語が描く源頼政の変化退治・鵺退治2016

    • 著者名/発表者名
      櫻井陽子
    • 雑誌名

      明月記研究

      巻: 14 ページ: 253-266

  • [雑誌論文] 覚一本平家物語の書写と本文-新出伝本の紹介から「小宰相」「宗論」の問題に及ぶ-2016

    • 著者名/発表者名
      櫻井陽子
    • 雑誌名

      駒澤国文

      巻: 53 ページ: 67-105

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 平家物語の小宰相2015

    • 著者名/発表者名
      櫻井陽子
    • 雑誌名

      国語と国文学

      巻: 92-4 ページ: 35-51

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 世阿弥の時代の平家物語2015

    • 著者名/発表者名
      櫻井陽子
    • 雑誌名

      中世文学

      巻: 60 ページ: 19-28

  • [図書] いくさと物語の中世(担当論文「延慶本『平家物語』の陥穽─以仁王の乱の描写を対象として─ 」)2015

    • 著者名/発表者名
      櫻井陽子
    • 総ページ数
      602頁(担当部分:p155-176)
    • 出版者
      汲古書院

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公開日: 2017-01-06  

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