研究課題/領域番号 |
23520243
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研究機関 | 駒澤大学 |
研究代表者 |
近衞 典子 駒澤大学, 文学部, 教授 (20178297)
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研究分担者 |
川上 陽介 京都大学, 国際交流センター, 非常勤講師 (00574451)
田中 則雄 島根大学, 法文学部, 教授 (00252891)
福田 安典 日本女子大学, 文学部, 教授 (40243141)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 善書 / 日本近世文学 / 中国 / 陰隲録 / 陰隲文 / 太上感応篇 / 国際情報交流 |
研究概要 |
平成23(2011)年6月10日(金)14時より、駒澤大学246会館6-1会場において、第1回会議を行った。参加者は近衞典子・田中則雄・福田安典・川上陽介・木越治・入口敦志・申英蘭。今年度及び3年間の研究の方針、研究分担の方法、予算の執行方法等について以下の通り確認した。(1)各自、善書及びその周辺資料についての資料収集・調査を行う。(2)各自、それぞれの研究テーマに応じて、日本近世文学における善書の影響について研究を進める。(3)前年度の研究結果を踏まえて、平成24(2012)年度に中国においてワークショップを実施する。科研メンバー相互の研究成果を共有し、さらに中国研究者との交流を進めることを目的とする。(4)最終年度には、それまでの研究成果をまとめ、公開する(以上)。続いて研究報告がなされ、研究の方向性と可能性が示された。報告は近衞「陰隲文の諸本について」、福田「庚申について」の2本である。当日は会議後、駒澤大学禅研究所において本研究と関連性の深いテーマでセミナーが開催されたので(禅研セミナー「紙銭の世界」16:30~18:00)、全員で参加・聴講し、中国文化への理解を深めた。その後は、科研メンバー各自がそれぞれの研究テーマや興味に応じて、善書及びそれに関連する日本近世文学資料や周辺資料の収集・調査に当たり、研究を進めた。また必要に応じてメールにてメンバー会議を行い、情報を共有した。一方、次年度の中国におけるワークショップ開催に向けての準備も並行して行った。会場校としてハルビン工業大学の協力を得ることが出来、平成24(2012)年8月26日~29日の日程で、当該大学においてワークショップを開催することが決定した。現在は詳細について交渉を行っているところである。前半はシンポジウム、後半は研究発表というプログラムで、既に発表メンバーもほぼ決定しており、具体的な作業が進捗している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
東日本大震災によりスタートは少々遅れたものの、第1回会議で明確な研究方針が定まり、その後すぐに活動を始めることができた。会議では、平成23年度、及び今後3年間の研究計画が話し合われ、承認された。また、会議以前からメンバー各自の研究はそれぞれに進められていたが、その中から2名により調査報告がなされた。会議後はメンバー各自がそれぞれ独自に研究を進めることになるが、この報告において善書と日本近世文芸との関わりについて新たな研究テーマが示されて、メンバーそれぞれの問題意識が刺激され、その意味で大変有意義であった。この第1回会議の席上、平成24(2012)年度に中国においてワークショップを行うという企画が検討された。この企画は承認されたものの、一番の懸案事項として中国の大学との連携の問題が残された。しかしその後、メンバーの申英蘭氏の尽力により、ハルビン工業大学の協力を仰ぐことができるようになり、当大学を会場校としてのワークショップを実現できる運びとなった。このワークショップへの参加を広く呼び掛けたところ、時代を超えて多くのメンバ-が参集し、内容の充実したワークショップを開催できる見通しが立った。現在、その実施に向けて、ハルビン工業大学スタッフとも連絡を取り合いながら、精力的に企画立案を推し進めているところである。一方、メンバー各自は、それぞれの研究テーマについて、数多くの文献資料及びその紙焼き等を収集・調査したり、各地に調査旅行に赴いたりして、それぞれに資料収集・調査研究を順調に進めている。メンバー相互の連絡はメールを始め、さまざまな方法で緊密に行われ、新たなる資料の存在など研究に資する情報はすぐに共有されて、それぞれの問題意識に応じ、その調査研究に生かされている。以上の点から、本年度の研究課題の達成については、当初の計画に照らして、おおむね順調に進展していると評価してよいであろう。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題は3年間に亘って推進される予定であるが、その2年目に当たる平成24(2012)年度における最も大きな企画は、中国におけるワークショップの開催である。既に、平成24(2012)年8月26日~29日の日程で、ハルビン工業大学を会場校としてワークショップを実施することが決定している。27日に行われるワークショップでは、前半は本研究課題の研究代表者・分担研究者を中心とした、善書と日本近世文芸に関するシンポジウム、後半は科研メンバー以外の研究者も交えた、より広い研究テーマに基づく研究発表、というプログラムを予定している。既に発表メンバーもほぼ決定しており、現在、精力的にその実施に向けて企画立案・準備を進め、また当日の運営の詳細について当該大学と交渉を行っているところである。ワークショップ後には、中国側スタッフとの懇親会を企画し、国際交流を図り、相互の研究への理解を深めたいと思っている。翌28日にはハルビン市内の文学踏査を予定している。近世から近代にかけて日本とさまざまな交渉のあった舞台として、日本人研究者にとって得るものは大きいであろう。本ワークショップにおいては、前年度の科研メンバー各自の研究成果をそれぞれ発表し、相互にその成果を共有することで、本研究のテーマをさらに深め、また新たな研究課題を明確にすることができるはずである。さらに、このワークショップをきっかけとして中国の大学との交流を深め、相互の研究の発展に寄与できればと考えている。最終年度に当たる平成25(2013)年度には、このワークショップにおける成果を踏まえて更に研究を深め、同時に善書の資料収集・調査研究も継続する予定である。また、それまでの調査を通じて得られた研究成果を世に広く問うために報告書を作成することは勿論であるが、研究の集大成として、メンバーを中心とした研究論文集の出版を企画したいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
中国におけるワークショップを実施するに当たり、ハルビン工業大学の協力を得ることが出来たので、平成24(2012)年度の本研究における研究予算の使用は、このワークショップ開催を中心として行う予定である。まず、事前にワークショップ開催を周知する必要があるため、科研メンバーの所属学会である日本近世文学会の春季大会(平成24年6月23~25日、於明星大学)に合わせてポスター及びチラシを作成し、手渡し及び郵送により、広く参加を呼び掛けたいと考えている。このポスター等印刷費・郵送費、事務用品購入費用等に 万円を見込んでいる。ハルビン工業大学におけるワークショップそのものは、平成24年8月26日(日)~29日(水)を予定している。27日に日本からの科研メンバーを含む参加メンバーと中国側参加メンバーとによるワークショップ(シンポジウム、及び研究発表)を実施する。そしてワークショップ後には、相互の親睦を深め、研究情報を交換し、日本と中国との国際交流を図るために、参加者による懇親会を企画したいと考えている。また、翌28日には、ハルビン市内の文学踏査を行う予定である。このワークショップ開催にかかる日本からハルビンへの出張旅費、ハルビン工業大学での会場準備費用、ハルビン工業大学のスタッフへの謝礼や懇親会費用として25万円を見込んでいる。また、ワークショップに向けての調査研究用・発表用にノート型パソコン1台及び周辺機器を購入する予定である(予算額は20万円)。その他、前年度に引き続いて、善書関係の資料の収集、及び調査を行わなければならない。その費用を見込んでいる。
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