研究課題/領域番号 |
23520243
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研究機関 | 駒澤大学 |
研究代表者 |
近衞 典子 駒澤大学, 文学部, 教授 (20178297)
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研究分担者 |
川上 陽介 富山県立大学, 工学部, 准教授 (00574451)
田中 則雄 島根大学, 法文学部, 教授 (00252891)
福田 安典 日本女子大学, 文学部, 教授 (40243141)
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キーワード | 日本近世文学 / 中国白話 / 陰隲録 / 道教 / 黄檗僧 / 上田秋成 / 雨月物語 / 霊符 |
研究概要 |
本年度は研究最終年度であるため、これまでの研究を継続的・発展的に推し進めつつ3年間の研究成果を総括し、かつ今後の課題を明確にすることが肝要なテーマとなった。 メンバーは各自で日本近世文学と中国白話との関連性を中心とする研究を推進する一方、学会を始めとする場で情報を交換することにより研究の現状や問題点・課題等を理解し、研究の方向性をメンバーで共有し各自の研究に反映させた。 本年度の研究の特筆すべき点として、昨年度に実施したハルピンでのワークショップが齎した研究の深化のうちの幾つかが、早くも成果として結実したことが挙げられる。このワークショップでは、江戸時代初期における渡来の黄檗僧らを通じた明・清文化流入の影響がいわゆる「文学」の範疇にとどまらず、より広範かつ日常卑近なレベルにまで及んでいることが、『陰隲録』を始めとする作品の流入やその日本近世文芸への反映についての多面的な研究を通じて浮き彫りになった。幅広く中国文化と日本文芸との影響関係を探るという自由闊達なこのワークショップを通じて、個々の具体例を超えた大きな文化的潮流を把握することが出来、今年度はメンバーがそれぞれに論文発表や学会研究発表を重ね、世に広くこの科研での研究成果を提示することができた。たとえば研究代表者は、周知の作品である上田秋成の読本『雨月物語』の分析を通じて、従来は見過ごされていた呪符の形象に道教的な中国文化の影響が見られることを明らかにし、学会発表した内容は学会誌に掲載された。研究分担者、連繋研究者も積極的に論文や研究会等で成果を発表している。 また、日本文学研究の国際的な展開にも有益であった。ワークショップを機に生まれた人的交流により、今年度はハルピン工業大学の准教授を日本に迎え、科研メンバーを中心とする研究会を開催することができた。また来る5月には研究代表者が韓国で科研の成果の一部を研究発表する予定である。
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