研究課題/領域番号 |
23520246
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
山崎 淳 日本大学, 生物資源科学部, 講師 (20467517)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 国文学 / 真言密教 / 寺院所蔵文献 / 近世 / 説話 / 仏教文学 |
研究概要 |
1、本研究の基本となるのは、地蔵寺(大阪府河内長野市)所蔵文献の調査である。蔵書の核となっているのは、同寺開山・蓮体(1663~1726)の所持本である。原則として、箱番号の順に全蔵書の書誌を記録する悉皆調査を行い、その結果をデータベース化する作業を行っている。ただし、蓮体(及び師の浄厳)の著作が集中する19、20箱や、特に重要と判断した資料については箱順にこだわらず調査を進めた。書誌調査を含め、各文献を精査することにより、古さや規模において他の寺院に突出しているわけではない同寺が、質・量とも充実した文献を所蔵していることが明らかになりつつある。2、調査の成果の一部は、平成23年度仏教文学会大会の創設50周年記念シンポジウム「仏教文学研究の可能性」において発表した。その内容は平成24年度に論文化される予定である。その他にも2本の論考を公表した。それらの発表・論考では、寺院に所蔵される近世文献の重要性、及び寺院所蔵文献における版本の意義付けを提唱した。また、地蔵寺所蔵文献における蓮体自筆の書き入れが、説話伝承資料、蓮体の伝記資料、同時代資料として大きな意味を持つことも提示できた。これらの指摘は地蔵寺調査のみにとどまるのではなく、今後の仏教文学研究、寺院資料調査一般へもつながっていくことが期待できる。3、関連寺院の一つである金剛寺の調査においては、地蔵寺所蔵文献と金剛寺所蔵文献とが確実に関係のあることを示す資料を見出すことができた。これは地蔵寺のみならず、近世の金剛寺を考える上でも重要である。その成果の一部は、連携研究者として参加している「金剛寺所蔵典籍の集約的調査と研究―聖教の形成と伝播把握を基軸として」(平成23年度 科学研究費補助金 基盤研究(B)23320054)の平成23年度研究会(平成24年2月27日 於京都国立博物館)において報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1、地蔵寺所蔵文献の悉皆調査については、1~16、19、20、22~25、35、49箱がほぼ終了している。また、それ以外の箱においても、半分以上の調査を済ませている。資料の点数としては全体の約四分の三を調査し得たことになる。2、調査の済んだ資料については、目録(データベース)への転記(パソコンへの入力)が完了している。3、成果の公表のうち、仏教文学会大会で口頭発表したものは、当初平成23年度に雑誌論文として刊行される予定だったが、諸事情により掲載雑誌が次年度刊行という形になった。しかしながら、全体として順調に公表ができていると言える。4、震災の影響によって調査日数が当初予定していたよりも確保できなかったため、書誌調査を優先した。したがって、写真撮影は部分的なもの(資料1点を全冊撮るのではなく、書き入れのある部分にしぼるなど)にとどめることとなった。
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今後の研究の推進方策 |
1、地蔵寺所蔵文献調査は、平成23年度の調査方針を継続し、データの増補・充実を目指す。特に、整理番号が付されておらず、未調査である秘密儀軌類について積極的に調査を進める。また、書誌調査と並行して写真撮影を行う。これはできる限り全冊撮影を進める。2、データ入力は、平成23年度の方針を継続し、調書情報のパソコンへの入力を随時行い、データベース化を進める。また、これまでの整理で遺漏が認められたものは再調査し、補足分をデータへ反映させる。3、地蔵寺以外の蓮体関係寺院所蔵文献調査は、平成23年度の調査方針を継続し、データの増補・充実を目指す。特に金剛寺については重点的に調査する。4、図書館・研究機関所蔵の関連資料収集は、平成23年度の方針を継続し、データの増補・充実を目指す。5、研究成果の一部を、平成23年度と同様、学会・学術雑誌などに発表する。
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次年度の研究費の使用計画 |
1、震災の影響で調査の回数が予定よりも減少したことを鑑み、現地での調査を増やす予定である。そのため旅費が増加する可能性がある。2、上記の1に関連して、平成23年度は現地で使うノートパソコンと小型デジタルカメラの購入に到らなかったため、平成24年度は当該備品をまず購入する予定である。3、文献資料の収集については、他の研究機関に所蔵されているマイクロフィルム・紙焼き写真の購入を中心に進めていく予定である。4、その他の備品・図書・電子資料等は、必要に応じ随時購入する。
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