研究課題/領域番号 |
23520247
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研究機関 | 日本女子大学 |
研究代表者 |
福田 安典 日本女子大学, 文学部, 教授 (40243141)
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キーワード | 俳諧 / 四国 / 平賀源内 / 松山 |
研究概要 |
交付申請書に記した「研究計画」にそって、資料調査、分析、データ化などにより、四国地域における俳諧資料の調査を推進した。結果、四国地域に於いては、図書館や大学といった公共機関に限っても、愛媛に残存する資料が圧倒的に多く、価値のあるものであるとの結論を得た。そのデータ化はほぼ当該年度間内で終了している。調査に基づき、次年度には、伊予を代表する俳人ある栗田樗堂についてレフリージャッジのある研究誌へ研究成果をまとめて投稿する(投稿自体は2013年3月に行い、査読結果は「採択」とのことで、2013年7月には刊行される予定である)。 また、当該科学研究費補助費を用いて、松山市教育委員会と松山市立子規記念博物館の協力を得て、研究者を招聘して、2013年5月に、近世に愛媛県で流行した松木淡々についてのシンポジウムを開催するための準備を進めている。この事業については、日本近世文学会の後援申請を提出し、承認されたきわめて公共性の高い事業であり、一般への公開を前提としており、交付申請書に記した「研究の目的」「研究実施計画」に即した社会還元、発信としての事業を展開する。申請者は、四国の俳書の状況について報告し、その意義と問題点について提言する予定で準備している。その準備に関わる研究作業はすべて2012年度内に、科研費の執行を受けて完了している。 2012年には、四国の俳諧、特に讃岐と平賀源内を中心とした俳諧についての内容を含む研究書を出版した(『平賀源内の研究 大坂篇』、ぺりかん社)。また平賀源内に関する論文も発表している(査読付き)。平賀源内の俳諧活動については、従来、讃岐俳諧の中でも、また全国俳壇の中でもきちんと位置づけられたことはなく、今後は、拙著を踏まえた議論を期待している。また、源内の伝記の中でも、俳諧を位置づけることが従来は看過されてきているので、その方面でも今後に期したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
四国地域の俳書の調査・研究については、申請当初よりの調査対象からの協力が得られていることに加えて、折しも2013年は、伊予の俳人の栗田樗堂の没後200年に際し、松山市では、NPO法人や松山市教育委員会、松山市立子規記念博物館、史跡庚申庵などが事業やイベントを展開しており、その流れに沿う形で研究を推進している。当該申請研究は、「研究計画」に一般社会への影響や期待される効果として、シンポジウムや後援などによる研究成果の発信と資源化を申請書に記していたが、その予定通りの研究成果および発信が研究最終年である2013年に見込まれる予定である。これらの企画はいずれも日本近世文学会からの後援がある、きわめて学際的で公共性の高いものに仕立てることができた。 四国の俳書のデータ化については、科研費で購入した「桐」というソフトが有効で、あらかたのデータ整理の見通しがついている。同時に、その作業を通じて論ずべき次の課題も新たに見つかり、問題点の指摘も可能となっている。その研究の進展を踏まえて次年度の研究プランのデザインを描くことができる。 上記以外では、本年度までの研究成果の一部については、栗田樗堂について、俳諧と煎茶、上方文人との関わりについて、査読付き雑誌に投稿し、2013年度中には公刊される見込みである。 また、当該研究は平賀源内の研究という視座を片方に設置しているが、その平賀源内については、讃岐の俳諧を中心として、前半生の伝記上の空欄を埋めた研究書を上梓することができた(2013年1月、『平賀源内の研究 ー大坂篇』、ぺりかん社刊、単著)。同時に後年の東北地方における平賀源内の鉱山活動などについて、俳諧のパトロンとの関係も視座に収めて、査読付き雑誌に投稿して、2012年に採択され、公刊、資源化している。
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今後の研究の推進方策 |
当該研究の今後の推進方策については、論文や活字化による研究成果の公開と、シンポジウムや後援を通じた一般公開の両面から展開していく。また、資料の調査と研究は従前通りに継続する。 論文や活字化による推進は、伊予を代表する俳人である栗田樗堂について、その俳諧と煎茶、また上方文人との関わりについて、在四国の資料を丹念につなぐことで論じたものを、『上方文芸研究』第10号(2013年7月頃刊行、上方文芸研究会、査読付き)に掲載する予定である。 後援・シンポジウムについては、2013年5月19日に、松山市立子規記念博物館で「俳諧の鬼才・淡々って何なん ー伊予の俳諧を考えるために-」を開催する。これは伊予の土居にある山中家の暁雨館の資料(現在は四国中央市教育委員会所蔵)について、視界の専門家を愛媛県松山市の子規記念博物館に招聘して、関係各位と議論をかわしてその問題点や意義について浮き彫りにさせるものであって、一般公開を前提としている。松山市教育委員会も協力と後援をしてくれることとなり、松山市で展開する栗田樗堂没後二〇〇年祭との連動する形で、展開していく予定である。 俳諧資料の調査については、今後も新資料の探索、従来資料のデータ目録化を昨年度同様に継続していく。その一部については、上記シンポジウムで公開する予定であるが、将来的にはこの研究成果の土台にたって纏める方向で集成していきたい。 また、四国の俳書についてはまだ収集が可能でもあるので、予算施行との関わりから、蒐集できる資料については紙焼きやコピーなどを収集していきたい。同時に第一次資料の収集についても視座を有していきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費の使用計画については、論文や活字化による研究成果の公開費用と、シンポジウムや後援運営費用、資料の調査研究費用を計画している。 論文や活字化による推進は資料、伊予を代表する俳人である栗田樗堂について、その俳諧と煎茶、また上方文人との関わりについて、在四国の資料を丹念につなぐことで論じたものを、『上方文芸研究』第10号(2013年7月頃刊行、上方文芸研究会、査読付き)に掲載する予定である。その原稿掲載料としての執行を考えている。また、研究成果の送付について見込まれる抜き刷りなどの作成費用や郵送料についても、当該補助費によって支出する予定である。 後援・シンポジウムについては、2013年5月19日に、松山市立子規記念博物館で「俳諧の鬼才・淡々って何なん ー伊予の俳諧を考えるために-」を開催する。これは伊予の土居にある山中家の暁雨館の資料(現在は四国中央市教育委員会所蔵)について、視界の専門家を愛媛県松山市の子規記念博物館に招聘して、関係各位と議論をかわしてその問題点や意義について浮き彫りにさせるものであって、その招聘研究者や関係者の交通費としての執行を考えている。また、シンポジウム開催に必要な費目の執行も計画している。 また昨年度に引き続き、俳諧資料の調査を継続していくが、そのために必要な調査費用、研究に必要な書籍の購入などを科研費の執行費目として考えている。四国の俳書についてはまだ収集が可能でもあり、前年度までに収集できなかったものも多いので、対象の資料については紙焼きやコピーなどを計画的に収集していきたい。同時に第一次資料の購入事態も可能な限りにおいて、随時行う予定である。
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