四国地域の俳諧資料について、讃岐談林派の流れを汲む平賀源内と、伊予淡々流の大きな流れを作った山中時風と、伊予松山にあって早くに蕉風復興運動に応じた栗田樗堂を中心に研究を展開し、著書や論文、シンポジウム、一般公開パンフレットで実績を示した。 併せて、四国地域に残存する俳書の保存と活用を図るべく、入手し難い地域資料を用いてデータベースを作成、一部は完成を見た。以下、概要である。 また、讃岐俳諧の中心である平賀源内は、同時に江戸文芸の立役者でもあって、中国白話小説の受容の鍵を握る人物であることを明らかにした。その延長から投壺や中国白話笑話との関係、上方の都賀庭鐘、木村蒹葭堂、上田秋成らとの関係についての整理と新知見を提示した。 伊予淡々流を顕彰した山中時風については、彼を顕彰すべく暁雨館が四国中央市に建立されているが、知名度の無さと交通の悪さによって利用者が少ないという悩みがある。この交付金を受けて、暁雨館の活動を広く知らしめることが出来、地域の活性、俳諧の汎用性を示せたことの意義は大きいと思われる。 伊予俳壇の樗堂については、松山ではNPO法人の活動とともに徐々に知られるようになっている。その現状に対して、シンポが開かれ、そのパネラーとして当該研究費によって成された知見を一般に還元した。その折の報告書も一般に配布されている。また、樗堂については、近世中期における煎茶受容については特筆されるべき人物でありながら、その実態についての言及は従来無かった。そこで、上方の煎茶(特に木村蒹葭堂による売茶翁流)が七五三長斎を通じて樗堂に影響を与えたことを論文によって明らかにした。 四国地域の俳書のデータベースについては、ある程度完成はしている。現在、その配布方や一般への還元方法について検討している。必要に応じて、次回の科研費を申請したい。
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