研究課題/領域番号 |
23520254
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研究機関 | 金沢学院大学 |
研究代表者 |
柳澤 良一 金沢学院大学, 文学部, 教授 (80123222)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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キーワード | 和漢朗詠集私注 |
研究概要 |
近年、影印として出版した石川県立図書館蔵川口文庫善本影印叢書2『和漢朗詠集私註・文筆問答鈔』(柳澤良一編・勉誠出版、2010年)を翻刻しつつ、その「注」についてのコメントを付し、その際、太田次郎「釋信救とその著作についてー附・白氏新楽府二種の翻刻ー」『斯道文庫論集』第5輯・1967年、栃尾武『和漢朗詠集私注』新典社、1982年、三木雅博「『和漢朗詠集私注』の方法」『和漢朗詠集とその享受』勉誠社・1995年、『和漢朗詠集古注釈集成第一巻』大学堂書店・1997年等を参考にし、また国文学研究資料館及び内閣文庫、国立国会図書館などの諸本をも参考にして、「石川県立図書館蔵川口文庫『和漢朗詠集私註』の研究」(『金沢学院大学 文学・美術・社会学編』第10号、2012年)として発表した。 石川県立図書館蔵川口文庫本『和漢朗詠集私註』は、宮内庁書陵部蔵本、東京大学国語研究室本、京都大学図書館本、内閣文庫本、東洋文庫本などの写本とも、また寛永6年刊本とも比べて、書き込みがたいへん多いことで知られていて、翻刻する価値が十二分にあるとされている。 その結果、新発見としては、漢詩文の撰は藤原公任で、和歌の撰は堀川院の時で、藤原師頼等によって「詩文が能く相応」ずるように古歌を撰入させたものであるという、『和漢朗詠集』成立の新説が出ていることを指摘した。また、これは従来からの指摘もあるが、『和漢朗詠集』が藤原公任撰であること、また、藤原道長の二男教通と公任女の結婚の引出物として用いられたこと、さらに高倉院の時、蔵人の光弘が注を付けて6巻としたこと、私註の「私」の意味は、光弘が出家して南都に住んでいた時の作だからということなどを紹介した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
何回も重ねて書いていて、翻刻するには諸本との照合等が不可欠であること、また、付けられている注も引用が正確ではないため原典との照合が必要となることなどにより、作業に手間取り翻刻作業がやや遅れている。 川口文庫本『和漢朗詠集私註』の最大の価値は、宮内庁書陵部蔵本、東京大学国語研究室本などの写本や、寛永6年刊本とも比べて、書き込みがたいへん多いことにある。 そのため、正確を期して地道に作業を進める必要があると認識している。
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今後の研究の推進方策 |
遅れがちである川口文庫本『和漢朗詠集私註』の翻刻、及び「注」についてのコメントを完成すべく努力したいと思う。 しかしながら、何回も重ねて書いていることによる判読の困難さや、引用文献の不正確さなどがあって、この作業は遅れぎみである。にもかかわらず、拙速を避けつつ、考察の完成のために、夏期休暇などの長期休業日を利用して国文学研究資料館及び内閣文庫、国立国会図書館などの諸本と照合するなど地道な努力をする。
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次年度の研究費の使用計画 |
諸本の校合を行いつつ、本文の内容についての調査・研究を行う。 夏期休暇などの長期休業日を利用しての諸本の研究調査先としては、国文学研究資料館をはじめとして内閣文庫、国立国会図書館、大阪府立図書館、玉川大学図書館などを考えていて、旅費の費用が多くなると思う。 また、漢詩文関係の調査に必要な電子辞書、パソコンソフト一式(全唐詩、全唐文等)、パソコン関係消耗品、文房具などを当初の予定通り購入したい。
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