研究課題/領域番号 |
23520254
|
研究機関 | 金沢学院大学 |
研究代表者 |
柳澤 良一 金沢学院大学, 文学部, 教授 (80123222)
|
キーワード | 文筆問答鈔 / 印融 / 川口文庫 / 尊経閣文庫 / 内閣文庫 / 石川県立図書館 |
研究概要 |
影印本として刊行した石川県立図書館蔵川口文庫善本叢書2『和漢朗詠集私註・文筆問答鈔』(柳澤良一編・勉誠出版、2010年)の『文筆問答鈔』について、翻刻と校本の作成及びそれらについてのコメントを付した。すなわち、前著の中の「解説」に一部、翻刻本文も載せたが、今回は改めて全文を翻刻し、主要な写本や刊本(尊経閣文庫本・内閣文庫本等)との校合を行い、校本を作成することによって、従来、最も古い写本とされた尊経閣文庫本よりもさらに古い、川口文庫本『文筆問答鈔』の考察を新たに行った。 発表誌は、『金沢学院大学紀要』(第12号、平成26〈2014〉年3月)に「石川県立図書館蔵川口文庫『文筆問答鈔』の研究(1)」を、『金沢大学国語国文』(第39号、平成26〈2014〉年3月)に「石川県立図書館蔵川口文庫『文筆問答鈔』の研究(2)」を発表した。その(1)は、『文筆問答鈔』の成立と著者印融についての考察、書誌、翻刻、校異(尊経閣文庫本・内閣文庫本・神宮文庫本・京都大学附属図書館本・龍谷大学図書館本)、校訂本文で、そのうちの校訂本文には校訂注記と注を付け、本書の内容や価値について記し、「四、発句・腰句等の事」までを載せた。その(2)は、同様の方法で「七、序と詩との作躰の事」までを載せた。 これらの論文で、「文筆」の別についての見解が六朝時代の『文心雕龍』やわが国の『作文大体』に重なること、「絶句・律詩」の詠み方・構成については『作文大体』に重なる部分はあるものの、本書独自の見解が見られ、それが平安朝の漢詩を読み解く鍵になっていることなどを述べた。また、校本を作成する過程で、内閣文庫は本書や尊経閣文庫本の足りない所を補う価値はあるものの、一方で誤った増補もあり、本書の価値が一段と優っていることも明らかにすることができたと思う。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
川口文庫本『文筆問答鈔』は達筆ゆえに判読不能の箇所も多く、翻刻するのに諸本との照合が不可欠であること、また、付けられている注の文章も引用等が必ずしも正確でなく、出典や諸本との照合が必要になること、さらに現在までの研究史の検討を加える必要があるなど、いわば総合的な「漢詩史」研究的要素が加わったため、たいへんに時間がかかっている。 今後は、ともかく全文を翻刻して全貌を明らかにすることに努め、本書が平安朝の漢詩文読解に役立つ貴重な文献であることを示したい。
|
今後の研究の推進方策 |
現在進行中の作業の川口文庫本『文筆問答鈔』の翻刻をもう少しスピードアップするように努力したい。その上で、他本との校合やコメント作成を精力的に行おうと思う。そのために、主として国文学研究資料館に積極的に通い、マイクロフィルムの閲覧なども可能な限り利用して、研究を促進したい。そして、平安朝の漢詩文の読解に資する本研究を進展させたいと思う。
|