影印本として刊行した石川県立図書館蔵川口文庫善本叢書2『和漢朗詠集私註・文筆問答鈔』(柳澤良一編・勉誠出版、2010年)の『文筆問答鈔』について、翻刻と校本の作成及びそれらについてのコメントを付した。今回は前回に引き続いて改めて全文を翻刻し、校本を作成することによって、従来、最も古い写本とされた尊経閣文庫本よりもさらに古い、川口文庫本『文筆問答鈔』の考察を新たに行った。 発表誌は、『金沢学院大学紀要』(第14号、平成28〈2016〉年3月)に「石川県立図書館蔵川口文庫『文筆問答鈔』の研究(5)」を、『北陸古典研究』(第30号、平成27〈2015〉年11月)に「石川県立図書館蔵川口文庫『文筆問答鈔』の研究(6)」を、『金沢大学国語国文』(第41号、平成28〈2016〉年3月)に「石川県立図書館蔵川口文庫『文筆問答鈔』の研究(7)」を発表した。 これらの論文で、詩序は『王沢不渇鈔』下に、漢詩は『王沢不渇鈔』上と密接な関係のあることがわかった。したがって、校異にも『王沢不渇鈔』を付け加えた。また、大阪府立大学付属図書館『王沢不渇鈔』が、内容の理解にはたいへん役に立つこと、また、漢詩の詠み方について、特に句題詩の胸腰句が句題の内容を二つに分解して詠むべきことなどを指摘していて、そのことが平安時代寛弘期の漢詩の詠法と一致していることを発見した。このことに基づいて、平安時代寛弘期の漢詩や詩序の作り方について根本的な見直しをし、現在、新しい『本朝麗藻』の注釈を発表するために原稿作成中である。
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