本年度は、前年度までの研究成果を踏まえつつ、江戸時代における私家集と私撰集について、研究の円滑な推進に努めた。すなわち、近世私家集および私撰集伝本書目の編纂を進める一方で、未紹介私家集の翻印ならびに主要作品の注釈的研究にも周到な目配りを行った。 具体的作業は前年度と同じである。すなわち、質量ともに私家集・私撰集の写本・刊本に恵まれた諸機関において関係文献を調査するとともに、勤務先である人間文化研究機構国文学研究資料館に所蔵されている関係文献(マイクロフィルムないし紙焼写真)を鋭意調査して、伝本データの増補に努めた。 文献調査の過程で逢着した『百人一首像讃抄』の諸問題については、刊・印・修を総合的に検討し、論文を発表した。神作研一「歌書の刊・印・修―『百人一首像讃抄』の場合―」(中野三敏監修・河野実編『詩歌とイメージ 江戸の版本・一枚摺にみる夢』所収、勉誠出版、2013年5月)。また、小沢蘆庵の私家集『六帖詠藻』について、新日吉神宮蘆庵文庫に所蔵される写本47冊を全文翻字した(共編『近世上方文壇における人的交流の研究』所収、2014年3月)。 近世私家集および私撰集に関する私見を交えた近世和歌史全般について、英文による論文を発表した。神作研一「An Outline of the History of Waka in the Edo Period」(『国文学研究資料館紀要(文学研究篇)』40号、2014年3月)。
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