本年度は、前年度までの研究成果を踏まえつつ、江戸時代における私家集と私撰集についてその研究の円滑な推進に努めるとともに、最終年度としての研究の総括を行って今後のさらなる研究の進展に備えた。具体的作業は前年度までと同じであり、諸機関において関係文献を調査し、また勤務先である人間文化研究機構国文学研究資料館に所蔵されている関係文献(マイクロフィルムないし紙焼写真)を鋭意調査した。 文献調査の過程で逢着した、シーボルト旧蔵の『三十六歌仙』(オランダ・ライデン大学図書館所蔵)については論文を発表、所蔵者の許可を得て翻字も収載した。神作研一「ライデンの田舎版 付)田舎版『三十六歌仙』翻印」(国文学研究資料館編『シーボルト日本書籍コレクション 現存書目録と研究』所収、勉誠出版、2014年12月刊)。 また、多くの関係資料を収載する「売立目録」(うりたてもくろく)に関して、金城学院大学図書館(名古屋市守山区)に所蔵されている大量のそれを縦覧調査し、一般向けの文章として新聞に寄稿した。神作研一「魅惑の売立目録―落ち穂拾いの悦楽―」(中日新聞名古屋本社版、2014年10月17日付夕刊)。 『和歌文学大辞典』(和歌文学大辞典編集委員会編、古典ライブラリー、2014年12月刊)には、『水雲集』や『愚詠草稿』、『和歌古語深秘抄』や『真字百人一首』など、近世の私家集や私撰集に関する多くの項目を執筆、寄稿した。
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