研究課題/領域番号 |
23520257
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研究機関 | 椙山女学園大学 |
研究代表者 |
冨田 和子 椙山女学園大学, 生活科学部, 助教 (20155568)
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キーワード | 俳諧 / 狂俳 / 雑排 / 東海地方 / 近世 |
研究概要 |
本研究は、近世以降、現在までの東海地方の俳諧資料を収集し整理して、その特徴を明らかにすることを目的とする。特に、俳諧の盛んな地域である尾張・三河・美濃の資料を扱う。 当該年度は、研究実施計画に基づき、主に、個人蔵及び高浜市立図書館・郷土資料館蔵の未整理資料等の撮影・複写を実施した。特に、三河高浜(現在の愛知県高浜市)の雑排点者 お高(1729~1792)関係の資料で、未整理資料の撮影を実施した。 その他、東海地方の俳諧の内、伊勢笠付から派生した、文化・文政期(1804~1830)にはじまる名古屋の狂俳は、付句を終止形止めにするという独特な形式に加え、題と付句の付合関係を重視する。この付合重視の特徴は、伊勢笠付よりも、尾張の蕉風俳諧や享保期(1716~1736)に大流行した雲鼓流俳諧・雑排に近いと思われる。そこで、雲鼓(1666?~1728)の門人で、京だけでなく、地方の会所(興行主)と組んで活躍した雑俳点者の雲鈴(1674~1751)に着目した。 まず「寛延三年京雲鈴撰地方会所本にみる雲鈴の動向」(東海近世文学会7月例会発表 2013年7月)では、雲鼓流俳諧の特徴と雲鈴の略歴を確認し、次に雲鼓流が大流行し、地方にも雲鼓流の点者が増える中、『はいかい花の遊び』〔寛延3(1750)年2月〕他に載る遅撰の断り書きから、雲鈴が病を患い詫びながらも万句興行を続けられたことと、地方における雲鈴ブランドの大きさを確認した。なお、興行年未詳の勝句刷(上位句掲載紙)が多い中、「奉納五ヶ所」(三月)〈奈良大学図書館蔵宮田正信博士旧蔵 分類番号162-23〉は寛延三年頃のものと推定できた。 次に、東海地方の愛好者たちが多く参加し、雲鈴の病気による遅撰の断り書きの載る『はいかい花の遊び』、『はいかい鵙の初音』(同年5月)の2編を翻刻し簡単な語釈をつけ紹介した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「(2)おおむね順調に進展している」とするのは、以下の理由からである。 ①俳諧史の研究において、散逸しやすく、手薄な遊戯的な雑俳を含む資料の、一部ではあるが、当該年度に予定した量よりやや多い量の撮影(自己撮影、業者撮影)を実施できた。②特に、三河高浜(現在の愛知県高浜市)の雑排点者 お高(1729~1792)関係の資料で、所在不明であった未整理資料の撮影(自己撮影)を実施できた。③伊勢笠付から派生し、東海地方で現在も愛好される狂俳の特徴の一つに、付合関係を重視する点がある。この特徴について、従来いわれてきた尾張の蕉風俳諧の影響に加え、享保期(1716~1736)に大流行した雲鼓流俳諧(笠付)の影響について言及できた。④公表するためのデータ入力などの作業は滞っているものの、東海地方の愛好者たちが多く参加する『はいかい花の遊び』(寛延3年2月)、『はいかい鵙の初音』(同年5月)の2編を翻刻し簡単な語釈をつけて紹介できた。
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今後の研究の推進方策 |
26年度(最終年度)は、上半期は前年度に引き続き、東海地方に散見する近世後期の俳諧・狂歌資料の収集に努めながら、それらを整理する。特に、研究目的で示した次の4年間の計画の中で、特に、ア・イに重点をおいて作業する。 ア、個人所蔵の資料の撮影・複写を行う。イ、撰者・愛好者からの聞き取り調査を行う。ウ、尾張狂歌の影響関係を視野に入れて、俳諧関係者の狂歌資料を収集する。エ、地方の図書館・博物館所蔵の埋もれた俳書や引札類の収集と整理を行う。 そして、俳諧史上、特別な意味を持つ資料には翻刻許可を得て公表したい。 下半期は、収集・整理した資料をもとに報告書をまとめる。更に、ブログを立ち上げてインターネット上に発信する。 ○具体的な作業内容は次のとおり。 データの入力作業などに学生アルバイトを雇用する(110千円程度)。その他、コピー代(1枚10円×3,500 35千円程度)、出張旅費(岐阜県・愛知県 17千円程度)、研究成果報告書印刷費用(121千円程度)、送料(24千円程度)。
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次年度の研究費の使用計画 |
コピー代等の価格に誤差が生じ、残高不足(1千円程度)になるのをさけるために、3月の出張旅費の一部支出(7千円程度)を翌年度支出にしたため。 翌年度支出にした当該年度の出張旅費(7千円程度)は4月に支出する。その他は、データの入力作業などに学生アルバイトを雇用する(110千円程度)、コピー代(1枚10円×3,500 35千円程度)、出張旅費(岐阜県・愛知県 10千円程度)、研究成果報告書印刷費用(121千円程度)、送料(24千円程度)に使用する。
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