23年度は、『赤人集』の校本作成を中心に活動した。冷泉家時雨亭叢書の該当部分、また国文学研究資料館の紙焼き写真を中心に校本の作成に当たった他、文庫の調査は、書誌情報が不明であった東奥義塾高校図書館(青森県弘前市)、及び国文学研究資料館に資料がない東海大学図書館蔵桃園文庫本(3本、神奈川県平塚市)を対象として行なった。 24年度は、23年度の調査研究を踏まえて『赤人集』の校本作成および諸書に記載の訓読本文の調査を行った。また、文庫の調査は、内容が不明であった今治市立河野美術館蔵の『柿本朝臣・山部宿禰歌集』の実地調査を行った。その成果を研究論文「近世期の人麻呂・赤人の一面-河野美術館蔵『柿本朝臣・山部宿禰歌集』について-」(藤田洋治、朝比奈英夫『東京成徳短期大学紀要』第46号)として公表した。 25年度は、『赤人集』本文の精査・校合及び、勅撰集、歌学書等に所載の訓読本文の調査を進め、校本の作成を続行した。24年度中に調査対象・範囲の見直しを行った結果、『赤人集』本文の校合の対象を主要な伝本に絞ること、訓読本文の調査を室町前期(およそ宗祇の頃)までの資料とすることによって調査対象・範囲が当初計画の3分の2程度に絞り込み研究計画の適正な進行が図られた。また、新出の『赤人集』伝本の調査結果を「歌仙歌集本『赤人集』の一伝本―新出伝本の本文とその位置づけ―」(朝比奈英夫、藤田洋治『京都光華女子大学研究紀要』第51号)として公表した。当該伝本の調査の過程で明らかになった知見をもとに、研究発表を行った(藤田洋治「赤人集歌仙歌集本系統の本文について」、平安文学の会、3月29日、大妻女子大学)。藤田は24年度まで研究分担者であったが、25年度は所属変更のため分担者から外れた。このため、研究代表者(朝比奈)の単独研究となり、藤田は研究協力者として引き続き本文校合等を担当し計画実行を補助した。
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