研究課題/領域番号 |
23520262
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
増田 周子 関西大学, 文学部, 教授 (30294664)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | 火野葦平 / 創作ノート / 従軍手帳 / 戦争 / 聊齋志異 / 受容 / 改変 / 中国 |
研究概要 |
本年は、火野葦平について、(1)戦争作家、(2)中国古典文学の受容と影響という二つの観点から調査し、研究を進めた。(1) 戦争作家としての火野を解明するにあたって、広東・海南島のフィールド調査をし、未発表の従軍手帳「広東作戦」を翻刻し、関西大学『文学論集』に発表した。それに基づいて、「火野葦平『広東進軍抄』の成立と「従軍手帳」」と題して、 2011年 10月に関西大学にて開催した国際シンポジウムで口頭発表をし、東アジア諸国の戦争の悲劇について考察し、研究者だけでなく、広く一般市民に研究の成果を公開した。そして、大谷渡編『青春と戦争の惨禍 大阪日赤と救護看護婦 研究報告集』に論文をまとめた。(2)中国古典文学の受容と影響という観点では、『聊齋志異』の火野文学への影響と改変問題に焦点をあてて、研究した。まず、2011年8月に中国陳西師範大学で開催された中・日・韓国際シンポジウムで、火野葦平の「取りかへばや物語」を発表し、『聊齋志異』の「陸判」の受容と改変を考察し、2012年2月には『文化交渉研究』第5号に論文をまとめた。さらに、『関西大学東西学術研究所60周年記念論文集』に、「妖亀伝」論を執筆し、『聊齋志異』の「申氏」の影響を論じた。また、『聊齋志異』の「五通」、「五通二」をミックスして改変した「淫神」、「画皮」を加筆・改作した「糞尿譚」の研究をおこない、『あしへい』第14号、関西大学『国文学』第96号に発表した。本研究は、未発表の「創作ノート」や「手帳」資料に基づく研究であり、それを公開し、考察したものであるため、新しい知見が得られるという学術的特色がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の目的」に記した、「創作ノート」、「従軍手帳」、など火野葦平の未公開の自筆資料を翻刻し、公開するということが、一部ではあるが達成でき、火野の従軍手帳から見た、日本のアジア太平洋戦争の諸相の一端をさぐることや、「創作ノート」から得られた火野葦平の創作の思考過程、執筆動機を研究することができたから。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度には、火野葦平の未発表の自筆日記のうち、「青春日記」(大正9年・大正10年・大正11年・大正12年)の翻刻を行い、出版し、火野文学の出発点である小倉中学時代のことを研究していく。また、昭和30年のアジア諸国会議とその後の日記「アジア日記」の翻刻をして出版し、昭和30年の火野葦平の研究をする。また、韓国の研究者らと関西大学東西学術研究所と共催で、「国際シンポジウム戦争の記録と表象―日本・アジア・ヨーロッパ」を関西大学にて開催し、シンポジウム論集を関西大学出版部から発刊する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費は、韓国の研究者らと関西大学東西学術研究所と共催で、「国際シンポジウム戦争の記録と表象―日本・アジア・ヨーロッパ」を関西大学にて開催し、シンポジウム論集を関西大学出版部から発刊する予定であり、その国際シンポジウムの費用として使用する。
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