最終年度の成果は次の通りである。まず、美術作品の画像の収集・整理について、ほぼ終えることができた。さらに、それらの中に、平安期の屏風絵を引き継いでいるのではないかと推定される画像を見出すことができたため、画像編集ソフト(フォトショップ)を使用して、簡単な解説を加えて整理した。 そもそも本研究の目的は、平安期の文学と美術の関係を解明することであった。その基盤とすべく、次の二つの調査を計画、実施した。すなわち、①「様々な美術作品に関する文献資料の収集・整理」と、②「平安期の絵を推定するのに有用な美術作品の収集・整理」である。 研究期間全体を通じて、①②の調査をほぼ予定通り終えることができた。とくに、②について、平安期の屏風絵に近似していそうな絵を収集できたことは、大きな成果である。たとえば「梅・桜・竹」などの植物、「鹿・雁・雉」などの動物、「春田耕す・秋田刈る・鷹狩り」などの人の営みを描いた絵は、平安期の和歌資料の詞書から推定される絵に近似している。これらを利用することで、平安期の和歌を中心とする文学と絵画の関係が、より明らかになるだろう。しかし、①②の基盤作りに想定以上の労力と時間がかかったため、最終的な目的としていた文学と美術の関係の解明は、まだ緒に就いたばかりである。 今後は、①②に基づき、関係解明の研究を推し進めていく。また、②の調査の大きな成果である、平安期の屏風絵を引き継いでいると推定される画像については、詳しい解説を加えて出版することを計画している。
|