研究課題/領域番号 |
23520264
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研究機関 | 相愛大学 |
研究代表者 |
山本 和明 相愛大学, 人間発達学部, 教授 (90249433)
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キーワード | 近世戯作翻刻本 |
研究概要 |
本研究は、木版印刷による近世戯作が、明治期の印刷手段の変更(活版印刷等)をへてどのように流通し、近代読者に受容されていったかを考察する基礎研究である。次の(A)(B)2つの課題を設定し、調査を進めている。 (A):明治期の新聞・雑誌の紙面、出版月報等の資料より、可能な限り近世戯作(ならびに古典)の明治期刊行に関するデータを集積するとともに、既存の目録類により今日現存する資料の所蔵先等の確認を行う。 (B):(A)に関する現存刊行物(資料)確認のため、公共図書館等で閲覧調査を実施し、調査閲覧データ化する。 平成23年度は(A)に少し重点を置き、古書店刊行目録や、既存の目録類、新聞紙面情報(読売新聞・東京日日新聞・出版書目月報など)によるデータ集積を行って来た。本年度(平成24年度)も(A)に関する調査作業として、引き続き明治期新聞紙面情報(いろは新聞・絵入自由新聞等)によるデータによる追加作業を執り行った。明治20年代後半から30年代までの基礎データ追加も読売新聞等で実施した。20年代よりはじまる叢書類については内容記載を簡略版としたが概ね計画通り情報収集している。 (B)公共図書館等での閲覧調査に関しては、大阪府立中之島図書館・篠山市立青山文庫など関西圏の図書館や、国会図書館や千代田区立図書館、昨年度実施出来なかった東京大学明治新聞雑誌文庫への調査、東北の酒田市立光丘図書館、長野の上田市立図書館花月文庫、千葉の成田山仏教図書館等で効率的に書冊の閲覧をおこなうことが出来た。データ整理面で、まだ画像に関しては蒐集データ段階であるが、少しずつ利用可能データ加工を進めていく予定。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(A)新聞記事等からの情報収集に関しては概ね順調と言える。データ収集では、いろは新聞や絵入自由新聞などを今回追加したが、この小新聞と称されるものに多く広告がなされているため、貴重な情報も多い。入力に時間のかかる面は否めないが、今後も相応の時間をあてるため支障はない。昨年度出来なかった新聞広告の画像データ収集は進捗状況をみて本年度スタートさせた。安売りで有名な兎屋などの広告類も年次をおって整理しているため、近世戯作のボール表紙本等が如何にどの程度の期間を経て廉価に流通したかも考察しうる基礎データが整ってきた。 (B)各図書館等の機関への調査閲覧ならびに収集に関しては、各所蔵機関目録や書目DBなどから、ある程度、一図書館での点数を掌握した上で調査収集にあたっているため、どうしても年度後半にずれ込んでいる。しかし近年の大学業務の多様化により、集中しての調査日数を確保できない点があり、時間の調整に問題を残している。それでも酒田光丘文庫をはじめ多くの図書館・文庫に調査に赴くことができた。 本年度、調査時に確認しえた書冊をもとに論文を1本公表した。また研究成果を踏まえたアウトリーチ活動として、勤務校貴重資料室での展覧を企画し(勤務校が大会実施した真宗保育学会日時にあわせ一般にも開放)、その展覧解説リーフレットを作成。ほかに、昨年度の調査で、明治期活版翻刻本のなかで紙型の流用による刊行状況が具体的に検証でき論文構想中としたが、その原稿を執筆(発表誌を検討中)。また、活版翻刻本に顕著に確認できる序文を巡って、近世戯作と近代活版本を対象にしデータを整理(その成果は次年度に論文公表予定)。
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今後の研究の推進方策 |
次年度に使用する研究費が生じた理由は1点。当初本年度実施予定であった都立中央図書館への集中調査だが、あいにく勤務校での業務(保育実習挨拶等)と重なり、予算執行できなかった。残した予算は出張旅費相当であり、翌年度には本年度予定していた調査を計画に追加するため、特に支障はないものと考える。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は以下のことを計画している。 (A)既存の目録類により今日現存する資料の所蔵先等の確認を行う点は、本年度でひとまず完了し、明治期の新聞紙面情報などの基礎情報の蒐集に関しては引き続き継続して実施していく。特に今後に活用しうる基礎データとなるため、本年度に未完了分のデータ点検や新たに官報などからの基礎的なデータを追記したい。さらに入力データの確認点検等にも相応に時間を費やしたいと考える。 (B)各図書館等の機関への調査閲覧ならびに収集に関し、本年度当初予定していた都立中央図書館を加えて研究を行う。次年度には東北大学狩野文庫等を調査先としたい。また本年度東京圏の調査予定であった国文学研究資料館等はまだ調査すべきものがあるため継続する予定である。 次年度には成果報告の公表として過去2カ年の研究成果を踏まえての論文作成を行い、集約したデータとともに成果報告書の刊行を目指したいと思う。当初は紙媒体を検討してきたが、データの活用を考え、PDF化によるCD等での配布も検討する(PDF上に画像を貼り付けるよりも画像フォルダを作成しその画像№をデータ上に付す方が有効利用できるとも思うため、目下検討中)。
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