本研究は、木版印刷による近世戯作が、明治期の印刷手段の変更(活版印刷、銅版印刷等)を経てどのように流通し、近代読者に受容されていったかを考察する基礎研究である。次の(A)(B)2つの課題を設定し、調査を進めていった。 (A):明治期の新聞・雑誌の紙面、出版月報等の資料より、可能な限り近世戯作(ならびに古典)の明治期刊行に関するデータを集積するとともに、既存の目録類、古典籍商の目録より、今日現存する資料の所蔵先等の確認をおこなった。古書店目録、既存目録、新聞紙面情報(読売・東京日日・出版書目月報・いろは・絵入自由)などを調査し、データ化をおこない、最終年度である平成25年度は、そのデータ点検と国会図書館から公開されている官報記事の点検を主としておこない、当初予定した基礎的なデータ入力をほぼ完了した。明治期において近世戯作の諸ジャンルのうちどの作品が翻刻されていったか、把握可能なデータとなった。 (B):(A)に関する現存刊行物(資料)確認のため、公共図書館等で閲覧調査を実施し、調査閲覧のデータ化をおこなうことを実施してきた。書影撮影は許可の点で至らなかったものもあったが、国会図書館や東大明治新聞雑誌文庫などの調査など想定していた文庫の訪問は達成できた。平成25年度は個人文庫蔵のものを借用でき、それを中心に撮影をおこなった。 研究成果の総括の一部として平成25年度には論文を公表した。集約したデータそのものの公開も今後公開に向けて準備している。
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