平成25年度の研究実績としては、(1)資料の収集と(清水春雄と「琉球大学英文科」について)、(2)玉井武についての論文の執筆の二点を特筆することができる。 (1)については、岐阜女子大学での調査(清水春雄)と、琉球大学での調査について触れる。清水春雄については、彼が最後に勤務した岐阜女子大学における調査(平成26年3月12日~15日)によって、彼の文学研究の重要な一側面を確認することができた。広島文理科大学時代に(直撃は免れたものの)原子爆弾により被爆、その悲惨な経験に応答するため、平和運動ではなく文学研究を選んだことは、すでに昨年度、小樽商科大学における調査で把握していたが、今回の調査では退職記念公演の記録である「〈辿った道〉」(1986年)という文書を見つけることができた。清水の研究業績には「原子爆弾」「太平洋戦争」という言葉は出てこないが、しかしそのホイットマン作品への取り組みの根元には被爆体験があると推定することができるようになった。 琉球大学での調査(平成26年3月17日~21日)では、日本返還前の琉球大学における人文系の起用論文を幅広く読み、琉球大学とアメリカの文化教育政策との密接な関係、アメリカに留学したいわゆる「米流」の業績を知ることができた。 (2)については、日本の中国大陸進出政策(いわゆる北方論)に合わせて、「辺境」とされてきた北海道を「中心」と表象する「北海道英学史」を構築しようとした玉井武について、昨年度調査した資料をもとに、論文を執筆した。
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