今年度はアメリカにおける戦争、特に南北戦争を挟んだ前後の時期における「奇形の男性性」を、特にマーク・トウェインの作品における身体表象から読み取ることを中心とした。その視点はさらに、アメリカの社会と文学における様々な「失敗」の表象を探ることへと発展させることができた。トウェインはその人生において様々な「失敗」に囲まれた作家であったと特徴付けることができる。彼が生前発表せずに残した膨大な作品には未完成であったり、何らかの矛盾が解決されずに残った失敗作もある。また当時の編集者により「失敗」と判断され、大幅な修正を施し出版に至ったものもある。当研究は「奇形の男性性」を抱える「失敗者」や「逸脱者」が描かれるトウェインの未発表作品の研究という今後の方向性を見いだすことができた。 研究成果はこの前年度に開催された国際学会での成果が、日本マーク・トウェイン協会が発行する英文学会誌 "Mark Twain Studies" に論文(“Understanding ‘Brilliant’ Failures: Reconsideration of Mark Twain’s Unpublished Manuscripts.”)として掲載され、国内外の研究者の元に届けられた。また、平成26年4月には日本アメリカ文学会中部支部第31回大会での研究発表を依頼され、当研究の新たな展開について「マーク・トウェインと失敗」という題名で発表し、様々な意見を仰ぐことができた。
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