研究課題/領域番号 |
23520293
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
滝口 晴生 山梨大学, 教育人間科学部, 准教授 (40226957)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | 国際情報交流 / キリスト教史 / 図像学 |
研究概要 |
本研究は、宗教改革時代に先鋭化した偶像崇拝・偶像破壊論争の精神史的意義を、キリスト教初期の図像に関わる議論から跡付け、その具体的な反映としてのジョン・ダンの宗教意識を中心に、十七世紀における人間精神の様態を解明し、あわせて偶像崇拝という思考構造の現代的意義を示唆しようとするものである。 平成23年度は、偶像崇拝・偶像破壊論争のいわば起源と言うべきローマ帝国における初期キリスト社会における論争、すなわち初期の護教論とキリスト教批判の対立のなかで、とりわけ図像に関しての論争を跡付けるための文献資料を収集した。 図像そのものに関しての資料は、キリスト教が公認された四世紀初頭のミラノ勅令以前と以後における図像の有り様が異なるため、ミラノ勅令以前については、カタコンベの図像に関する資料を収集した。カタコンベについての初期の基本文献は現在では入手不可能であり、これについては上智大学図書館所蔵の文献を閲覧した。また四世紀以前のキリスト教の教会の遺跡と考えられる、ドゥラ・エウロパスに関する文献を追加し、図像と祭儀との関連の資料とした。 以上で、四世紀までのローマ帝国時代におけるキリスト教関係の文献はほぼ収集済みで、これらの資料をもとに、神学的議論面では、初期の教父オリゲネスの『ケルソス駁論』を中心として、キリスト教側と反キリスト教徒の論点の整理を行っている。図像に関しては、カタコンベの図像が初期キリスト教徒にとっていかなる意義があったかを解析しているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成23年度は成果報告助成金事業の対応のため、こちらの進行がやや遅れたが、文献収集に関しては初期キリスト教関係の基本文献はほぼ揃ったといえるので、順次資料解析へと移ることができる状態である。また「偶像崇拝の記号論(2)」の執筆は進行中である。
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今後の研究の推進方策 |
四世紀までの、とりわけカタコンベ画像と、四世紀以後のキリスト教図像との違いを主に分析し、ビザンチン帝国における偶像破壊論を跡づける。
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次年度の研究費の使用計画 |
四~八世紀における偶像崇拝・破壊論を分析し、またイコンの意義を解明するための資料を収集する。平成23年度研究費の残額が若干額あるので、あわせて資料収集費用とする。同時にバーミンガム大学のビザンチン研究所を訪問し資料を閲覧するために渡英するので渡航費用も次年度の研究費に含める。
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