研究課題/領域番号 |
23520293
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
滝口 晴生 山梨大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (40226957)
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キーワード | 英文学 / キリスト教史 / 聖像 / 偶像崇拝 |
研究概要 |
平成25年度においては、ビザンチン時代における聖像崇敬と聖像破壊という、いわば偶像崇拝偶像破壊論争の最初の論争が行われた時代を跡付ける作業を行った。これは第一次聖像破壊時代(730-787)と第2次聖像破壊時代(815-848)に分けられる。 第1次聖像破壊時代は、レオ三世が政治的な理由から聖像破壊を行い、さらにそれを推し進めるとともに聖像破壊の理論的基盤を提出したのがコンスタンチノス5世であった。それにたいする反論としての聖職者の聖像崇敬擁護論が提出され、これは教会会議に記録されており、したがって教会会議の議論にしたがってこれを跡付ける作業となる。 上記の作業のうち、「偶像崇拝の記号論(4)」で、コンスタンチノス5世のキリスト論を根拠とする聖像破壊論(756年のヒエリア教会会議における聖像破壊論)とそれに対するダマスカスのヨアンネスの聖像弁護論を詳細に検討した。 787年のニケーア公会議において、聖像崇敬派が勝利し、聖像破壊論を、克明に論駁したのであるが、この議論の詳細を、ニケフォロス総主教の著作に基づいて跡付ける作業が次にくる。これは「偶像崇拝の記号論(5)」として現在まとめているところである。 なお前年度の実績として、カタコンベ図像の分析とミラノ勅令以後の聖像崇敬と聖像崇敬批判の起源についての論述を「偶像崇拝の記号論(3)」として発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度同様、ラテン語およびギリシア語を主体とする初期キリスト教文献を読みこなすのにとてつもなく時間がかかったことが最大の理由である。しかし、議論の起源となる時代であるので、詳細な検討が必要とされた。なお主要な議論の筋はおおむね抑えたとおもわれるので、以後宗教改革の時代へと進む予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度前半で、ビザンチン時代の議論を終える。次に本来は中世カトリック時代を扱う予定であったが、特にこの時代は主だった聖像崇敬批判論はないので、次の大きな転回点である宗教改革時代を先に扱うこととする。 これによって、宗教改革時代の偶像破壊運動、とりわけカールシュタットの聖像破壊運動に対するルターの反論を焦点にして、ルターの偶像崇拝理解を分析すると同時に、ジョン・ダンの説教における偶像崇拝理解と比較しながら、ルターとダンとの関連を追跡する。これによってルターの思考の反映が、ダンの詩においても見られるという本題目の仮説を証明するための材料を収集することができるであろう。
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次年度の研究費の使用計画 |
当該年度は文献収集に力を置き、年度最終部分で旅費にあてるつもりであったが、遠方への旅費に十分なだけの金額が残らなかったので、次年度に繰り越して旅費として使用するためである。 京都大学にあるルターのラテン語文献を閲覧するための旅費の一部として使用する。
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