平成26年度は「偶像崇拝の記号論(4)」と「偶像崇拝の記号論(5)」を山梨大学教育人間科学部紀要に発表した。前者は聖像破壊運動の開始であるレオ三世とコンスタンチノス五世の政策とそれに対するヨアンネスの弁護論を扱い、後者は聖像破壊決定をくつがえす聖像崇敬派の勝利である第7回ニケーア公会議の決定、およびその理論的基礎となったコンスタンチノープル総主教ニケフォロスとストゥディオスのテオドロスの聖像擁護論を扱い、7~8世紀における第一次偶像崇拝・破壊論争部分の論考を終了した。 平成26年度が最終年度にあたるため、論考を進めるために、中世における論争の追跡を一旦中断し、研究の最終段階である17世紀における論争の文学的反映の考察に移り、本件研究の主題でもあるジョン・ダンの作品を取り上げ、ダンの詩の論理を分析し、それがルターの聖像破壊運動批判の論理と共通することを指摘することで、詩の論理のほんとうの意味を明らかにする論考を執筆した。これは「ダンの「蚤]とルターの聖像破壊批判」として『十七世紀英文学会論集 十七世紀文学を歴史的に読む』に掲載されることになっている(5月刊行)。
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