研究実績の概要 |
トマス・ハーディは『森林地の人々』(The Woodlanders, 初出1887年)の原稿を執筆するにあたり、推敲に推敲を重ねたが、その生成過程は未だ明らかにされていない。生成過程を知る手がかりとしては、『森林地の人々』の校訂版が挙げられるが、この版は、原稿の最終形のみがアパレタスによって提示されている。言い換えれば、原稿内部の生成過程は研究されずに長らく放置されてきたと言える。本研究は、ハーディの自筆原稿内部の異同を検証することで、『森林地の人々』の創作過程を解明しようとするものである。 平成26年度は当初の予定どおり、主として生成批評版の作成に専念した。その成果は、単著The Profitable Reading of Fictionとして纏めているところである(平成27年度前半には刊行予定である)。 また、『森林地の人々』の創作パターンは、Jude the ObscureおよびThe Mayor of Casterbridgeと類似しているところがあり、昨年度はJude the Obscureについて、また今年度は、The Mayor of Casterbridgeについても分析の俎上に載せることとした。その成果の一部は、2nd Inernational Conference on Narrative(主催、名古屋大学国際言語文化研究科)において発表した。基調講演者のローズマリー・モーガン教授(アメリカ・ハーディ学会会長)から好意的なコメントを頂いただけでなく、本論文をHardy Reviewに寄稿するようにとの言葉を頂くことができたのも、今年度の大きな収穫であった。
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