研究概要 |
25年度は、研究計画に従って、18世紀イギリスにおけるアフリカ系作家と環大西洋地域における英語文学の全体像を把握するための資料調査を引き続きおこなった。それに当たって、最新かつ重要な関連文献のうち未収集のものを中心に収集を続けたが、本研究の開始当初から注目している二次資料、Eve Tavor Bannet, Transatlantic Stories and the History of Reading 1720-1810: Migrant Fictions (2011) および Eve Tavor Bannet and Susan Manning, eds., Transatlantic Literary Studies, 1660-1830 (2012) において示された指針は本年度も有効であった。昨年度に引き続き短期間ではあったが British Library に赴いての調査の結果、関連した一次資料の絞り込みが可能であった。また、「環大西洋」という観点で研究する上での重要文献、田中秀夫『アメリカ啓蒙の群像―スコットランド啓蒙の影の下で 1723-1801』(名古屋大学出版会, 2012) を吟味し、本研究との接点を模索した。本研究の研究期間を通じての成果としては、24年度に本研究テーマにおける最も重要な文献であるオラウダ・イクイアーノ『アフリカ人、イクイアーノの生涯の興味深い物語』を本邦初訳で翻訳刊行したことが挙げられる。本書には、これまでの研究成果を凝縮して詳細な作品解題を付し、18世紀の英語圏におけるアフリカ系作家の重要性を示した。23年度の成果であった、研究発表「波の間のセンティメント――Olaudah Equiano を通して “Inkle and Yariko” を読む」で示された方向性とともに今後も研究を深化させたい。
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