2014年度は本研究のまとめとして、マーク・トウェインの未発表長編『それはどっちだったか』と原型となる短編「インディアンタウン」を日本語に翻訳し、長い解説を添えて出版することをを最大の目標として取り組んだ。2013年度までに訳出作業は一通り終了していたので、今年度は時間をかけて読み直し、訳文に手を入れて完璧を期した。それに付す解説については、『それはどっちだったか』をトウェインの作品群全体の中にどのように位置づけることができるかを検証することを主眼に置いた長い論考となったが、8月から11月にかけて断続的に取り組んで完成させ、2015年3月に彩流社から出版することができた。これによって、本研究の最も重要な成果を広く社会に向けて還元することができた。 また、ディケンズ・フェローシップ日本支部と日本マーク・トウェイン協会が2014年6月に共同開催したシンポジウムにおいて、チャールズ・ディケンズの旅行記『アメリカ紀行』とトウェイン『それはどっちだったか』を比較し、両者の奴隷制表象の相違点を探る報告を行なった。このシンポジウムでの成果が、上記の長い解説文を書く準備作業として大いに役立った。加えて本研究においては、『それはどっちだったか』と同じくトウェインの晩年期に書かれた長めの未発表作品「落伍者たちの避難所」も検討の素材としたが、その英語版論文を日本マーク・トウェイン協会が発行する英文号会誌に発表して(2014年10月)、研究成果を海外に発信することができた。 総じて言うなら、4年間にわたる研究の道筋は当初の計画からやや変わっていったものの、最終的には目標にしていた研究目標を達成し、無事に最終年度の研究を終えることができた。
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