研究課題/領域番号 |
23520310
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
松田 雅子 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科, 准教授 (90249665)
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研究分担者 |
中島 恵子 大阪成蹊大学, 経営情報学部, 教授 (20188949)
西村 美保 福岡教育大学, 教育学部, 准教授 (60284452)
ルール・ドーン ミシェル 長崎大学, 大学教育機能開発センター, 講師 (20346943)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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キーワード | 国際研究者交流、カナダ / 国際情報交流、カナダ / 国際文学者インタビュー、カナダ |
研究概要 |
23年度には5月に小倉で総合的な検討会を開き、本研究全体の研究方針の策定と研究内容の確認を行った。9月には長崎で研究会を開いた。 研究代表者は長編小説『キャッツ・アイ』についての論文を、新英米文学会の記念論集『英米文学を読み継ぐ』(開文社、2012)により出版した。この論文については、英訳をしたので国際学会誌での発表をめざす。長編小説『またの名をグレイス』の論文を学会誌に投稿中である。アトウッドの後期の作品5編の分析が終わったので、出版をめざしさらに推敲を進めている。 中島はケンブリッジ大学でのアトウッドの講演をまとめた、作者の創作活動に関する重要な評論集『死者との交渉』(英光社、2011)の翻訳に長年にわたり取り組んできたが、今年ようやく刊行することができた。また、最新の短編集『テント』の翻訳を進めている。さらに『モラル・ディスオーダー』から初期の短編にさかのぼり、関連をさぐりながら、短編小説について資料収集と論文作成を進めている。 西村はアトウッドの詩人としての作風を把握することを目標にし、『ほんとうの物語』の詩を精読し分析した。詩人が個人的な問題と社会の暴力的な事件との間で葛藤している様子が描かれていると結論した。9月の研究会で A Conversation と Small Poems for the Winter Solstice を取り上げ、解釈について発表し議論を深めた。さらに資料収集を続ける一方で、Macpherson によるアトウッド論を学びつつ、彼女の詩作品の傾向やテーマ、執筆の手法について吟味した。ルールはサバイバルをテーマに、東日本大震災後の日本の状況と、アトウッドの詩や小説、評論に表されたカナダでのサバイバルの様相を比較した。9月の研究会で、評論集『サバイバル』と作家のフェミニズムの特徴について発表した。今後は学会誌での論文発表をめざしている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
中島は長年にわたり取り組んでいた翻訳書『死者との交渉―作家と著作』を今年度上梓することができた。これは計画以上の進展である。さらに短編集『テント』の翻訳に取り掛かっている。また、短編集についての論文をまとめている。 松田も『キャッツ・アイ』に関する研究論文を平成24年3月出版の研究書『英米文学を読み継ぐ』で出版した。また、この論文を英訳して、発表をするところまでこぎつけた。さらに、『またの名をグレイス』についての論文をまとめて、学会誌に投稿中である。この両名については、研究にかなりの進展が見られたといえる。 さらに西村は研究会で、アトウッドの詩作品の傾向を分析し、まとめて発表した。アトウッドの詩作品と小説の関連性の分析は重要な課題であるので、一歩目標に近づくことができた。また、ルールはカナダの社会思潮のアトウッドの作品に対する影響を調査している。今年度は、フェミニズムについてのアトウッドの特徴を考察し、サバイバルのテーマと共に、研究会で発表した。このように各人が分担した課題に取り組んでいるので、研究は順調に進展し、その成果は当初の計画以上に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は9月にカナダのトロント大学を訪問し、アトウッド自身とのインタビュー、リンダ・ハッチオンをはじめとするトロント大学の研究者3名(ジョン・オコーナー、ロバート・マックジル、メルバ・クレディキーン)とインタビュー及び研究交流を行う予定である。トロント大学には、アトウッドに関する全資料を集めた『アトウッド・ペイパーズ』があるので、さらに資料収集を行う予定である。 これらのインタビューを実りあるものにするために、インタビューでの質問事項を各自の研究分野から抽出し、質問の概要を策定する。また、これらのインタビューにおいて明らかになった事項を、各自の論文作成において利用する。録音したインタビューを書き起こし、学会誌などで発表する。アトウッドが『またの名をグレイス』執筆以前に、テレビ番組の脚本を書いたThe Servant Girl のビデオを、クイーンズ大学が所有しているので、キングストンで調査する。 カナダでのインタビュー調査を活用しながら、長編小説、短編小説、詩、評論の各分野において、各自の論文作成を進め、今年度の予定の成果をあげる。中島は引き続き短編集の翻訳と、短編集についての論文をまとめる作業を行う。松田は後期の長編小説5編について、論文を執筆したので、それらを貫く全体的なテーマを考察し、単行本として出版する準備を行う。西村は、詩作品と小説作品の関連について、さらに踏み込んだ分析を行う。ルールは、アトウッドを取り巻く社会思潮について、さらに調査を進め、『サバイバル』などの評論集に現れたその影響について、考察を進める。カナダの研究者との交流を続ける。
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次年度の研究費の使用計画 |
(1)旅費・滞在費:カナダへの出張における作家へのインタビュー、研究者との交流、資料収集がこの研究計画の中心となる。今年9月に研究旅行を行い、研究費は、旅費および滞在費として、予算を充てる予定である。(2)インタビューの書き起こしを行うので、謝金が必要である。(3)次年度はその発表に、学会旅費が必要である。
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