研究課題/領域番号 |
23520310
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研究機関 | 岡山県立大学 |
研究代表者 |
松田 雅子 岡山県立大学, 情報工学部, 教授 (90249665)
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研究分担者 |
中島 恵子 大阪成蹊大学, 経営情報学部, 教授 (20188949)
西村 美保 福岡教育大学, 教育学部, 准教授 (60284452)
ルール ドーン・ミシェル 長崎大学, 学内共同利用施設等, 講師 (20346943)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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キーワード | カナダ文学 / フェミニズム / 地球環境問題 / カナダの文化的自立 |
研究実績の概要 |
研究代表者は、マーガレット・アトウッドについての批評書『マーガレット・アトウッドの軌跡』の出版準備を進め、平成27年に出版予定である。アトウッドの後期作品のテーマを環境問題との関連でとらえ、グローバルビジョンの形成をたどっている。また、『キャッツ・アイ』の翻訳を進め、平成28年に出版予定である。この作品は小学生のいじめとそのトラウマからの脱却がテーマなので、今日的な問題として読み解くことができる。 共同研究者中島は、大阪成蹊大学『紀要』第1号平成27年3月発行に、論文「ヴァージニア・ウルフとマーガレット・アトウッドのレトリック――昆虫の眼、エイリアンの眼による多様な視点操作の効果――」を発表した。概要は、ヴァージニア・ウルフのショートフィクションである「キュー植物園」とマーガレット・アトウッドのmini-SFの「冷血」を中心に、登場人物のバラエティーとして人間の眼を装った昆虫やエイリアンの視点を分析した。また、『カナダ文学史』(ケンブリッジ大学)共同翻訳を進め、平成27年に出版予定である。 共同研究者西村は、アトウッドの小説、『またの名はグレイス』におけるヴィクトリアニズムに焦点を置いて、分析と考察を行った。ヴィクトリア朝期の支配階級は特有のダブル・スタンダードを有していたが、グレイスと彼女の精神科医の語りと表現を通して、当時の社会を支配する風潮、すなわちヴィクトリアニズムが再現されている。それによって、この物語は単にグレイスを中心としたプロットだけでなく、より複雑化し、屈折したヴィクトリアニズムの様相を呈していることを立証した。共同研究者ルールは、アトウッドの児童文学についての調査を続行している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アトウッドの文学世界に、長編小説、短編小説、詩、評論という作品群の分析と、その背景として、カナダの社会思潮、サバイバルの重要性、フェミニズム、多文化主義とアイデンティティ、地球環境問題とグローバリゼーションの研究という観点から日本人研究者とカナダ人研究者が共同でアプローチするという目的で、研究を始めた。長編小説、短編小説、詩、評論の分析は、順調に進み、研究書の出版にこぎつけている。また、論文も上梓し、翻訳も平成27年度に2冊出版する予定なので、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は研究の完成年度なので、『キャッツ・アイ』『カナダ文学史』(共同訳)の翻訳出版を行う。研究書『マーガレット・アトウッドの軌跡』を出版し、研究の一応の完成をめざす。また、Crisis and Beyond: The Literatures of Canada and Quebec Part 1: 30 September - 2 October 2015, University of Innsbruck, Austria Part 2: September 2016, The Banff Centre, Canada国際学会が開かれるので、参加して、国際的な研究者と交流する。また、研究年度は終わるが、2016年の学会での発表を計画する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
アトウッドの研究書『マーガレット・アトウッドの軌跡』出版が、2015年に延びたので、次年度使用に回すことになった。
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次年度使用額の使用計画 |
研究書と翻訳書の出版を行う。カナダ文学の国際学会に参加する。Crisis and Beyond The Literatures of Canada and Quebec Part 1: 30 September - 2 October 2015, University of Innsbruck, Austria.
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